学校のパワースポット
第11話 学校のパワースポット(1)
結局、昨日はわたしと雪姫ちゃん、兄と剣士くんのペアでそれぞれ寝た。年頃のことを考えれば男女別々の部屋なのは当たり前のことだろう。
雪姫ちゃんとはお風呂まで一緒に入った。1000年くらい生きているのに玉子みたいにすべすべな、アイドルのような肌をしていた。
転校の話も少ししたのだけど、徳川という人が全部手続きをしてくれるらしい。私立中学に途中から入学できるなんてものすごい特別待遇だと思う。わたしは勉強が苦手だから、受験するにしろ、しないにしろ、私立中学は行きたくないけど。お兄ちゃんの話を聞くと、毎日のようにテストがあるみたいだし。
寝る少し前の時間に黒いスーツを着た男性が家にやってきて、海上中学の女子制服と手続き書類を持ってきていた。執事とかそういうのだろうか。
「おはようでありんす」
雪姫ちゃんと洗面所で会った。雪姫ちゃんは顔を洗っている。
「おはよう、雪姫ちゃん。さっそく今日から転校なの?」
「この世界のことを学ぶためにも必要なことでしんしょう。兄様は今の世の常識がありませんから、車を刀で真っ二つにするところだったんでありんす」
「ああ、なんとなくイメージできちゃう」
「徳川様もちょうど小学5年生のお子様がいるらしく、その子がお兄様やいおり様と同じ小学校に通うらしいでありんす」
徳川くんか……もともとは将軍の家柄だからめちゃくちゃお金持ちなんだろうな。こんな田舎の学校でみんなと仲良くできるか心配だ……。
わたしの不安は授業開始早々的中することになる。
「今日からうちの学校で一緒に学ぶことになった徳川家保(とくがわいえやす)くんと宮沢剣士くんだ」
イケメンふたりの登場に教室の女子たちが騒ぎ出す。剣士くんはスポーツが得意そうなタイプで、家保くんは眼鏡をかけた勉強が得意そうなタイプだった。
「最初に言っておくけれど、この学校の生徒と馴れ合うつもりはない。俺と同じ転校生の剣士は別だがな」
都会から来た家保くんの第一声にクラスメイトたちはなんだこの生意気な転校生はという空気になった。
案の定、休み時間は剣士くんの周りは男子や女子でいっぱいなのに、家保くんの席には誰も近寄らない。いや、誰も近寄らない席はもう一つあった。神城さんの席だ。昨日までクラスのリーダーだったのに、これは一体どういうことだろう。
少しすると、何かを決意したかのような真剣な表情で神城さんが椅子から立ち上がった。
「ちょっと! 宮沢くん! あんたの近くにいた着物の女のせいでわたしはこんな姿になっちゃったんだけれど!?」
「……なんのことかな? わからないんだけれど」
剣士くんはとぼけている。
「このSNSを見てよ! わたしだけクラスのみんなから除け者にされてる! あんたのせいよ!」
好奇心と、悪いことをしたなという気持ちもあって神城さんのスマホを見ると、クラスのスマホをもっている子たちが神城さんが太ったことを笑ったり、バカにしたような言葉が書いてあった。
確かに傷つくな。こんな時はスマホを持ってなくて良かったと思う。仲間になれない代わりに余計なものも見なくて済むから。
「うるせーよ、なにわけのわかんねーこと言ってんだデブ」
どこからか男子の声がした。
神城さんは泣き出してしまって、剣士くんは申し訳なさそうな顔をしている。しかし、元に戻せる雪姫ちゃんは今頃中学校だ。
「田舎の学校はダセー奴ばっかりだな」
そういって、家保くんが神城さんをかばった。
「俺はあんたが気に入ったよ。学級委員長なんだって? 俺、この学校のことくわしくねぇし、色々と教えてよ」
神城さんは黙って頷くと、今度は他の男子が騒ぎはじめた!
「都会の男はデブが好き! 嫌われ者同士お似合いコンビ!」
本当に男子はガキだ。家保くんは優しさから神城さんをかばったことがわからないのか。
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