第6話 家に取り憑いた妖怪(2)

「城って、小学校では人の家をそう呼ぶことが流行っているのか?」

 兄はのんきに冷蔵庫からアイスを出した。スイカをカットした形のアイスを3本。わたしたちに差し出す。

「まあ、嬉しいでありんす」

「ありがとう。こんなに太っているから女の子と話すのは久しぶりだよ。学校にも友達がいないしね」

「確かに、今の時代は筋肉質で痩せているのがかっこいいみたいな風潮はありんすね」

 神城さんを膨らませたみたいに、雪姫ちゃんが兄に手をかざすと、みるみる痩せていって、あっという間に昔のイケメンの兄に戻った。

「え? な、なに? ど、どういうこと?」

「最近流行りのダイエット方だよ! お兄ちゃんは気にしないで!」

「いや、おかしいだろ。一気に30キロくらい痩せたぞ!?」

「くだらないことをしてないでこっちへ来い」

 剣士くんがまるで自分の家かのように階段を上がろうとしていた。

「お前の家、妖怪に取り憑(つ)かれているぞ」

「え、ええ!?」

 確かに最近、良くないことばかり起きていた気がするけれど……妖怪が原因なの?

「ふふふ、安心しろ。僕が退治してやる」

「なんだ? 妖怪ごっこか? お兄ちゃんが小学生の頃も妖怪アニメが流行っていたな」

 やせて自信がついたのか、それとも雪姫ちゃんの力なのか、兄が元気というか、昔みたいに明るくなっている。いつもはどよーんと勉強のことで悩んでばかりいるのに。

「この妖気……貧乏神のものでありしんしょう」

「びんぼうがみ? まさか、他人を不幸にする系?」

「そうだとも。よし、どくろども! 先に2階へ行ってこい」

 剣士くんの影からがいこつの妖怪が現れた。元は罪人だというけれど、剣士くんの言うことは聞くのだろうか。

「ひどいですよ、妖怪王さま。貧乏神なんて5級妖怪じゃないですか。おれらが勝てるわけありませんよ……」

 5級妖怪がどの程度のランクなのかわからないががいこつたちより強いみたいだ。

「とっとと偵察(ていさつ)に行ってこい! それとも僕たちの手で無に消されたいか?」

「ああ! は、はい! わかりました! 妖怪王さま!」

 その様子を見て兄は体を震わせている。それはそうだ。妖怪なんてみたら、いくら中学生でも怖くてしょうがなくなるよね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る