家に取り憑いた妖怪
第5話 家に取り憑いた妖怪(1)
学校から二人を連れて家に帰る。家は二階建てで、二階の窓はカーテンで閉め切っている。兄の部屋だ。剣士くんや雪姫ちゃんに見られるのはなんだか嫌だから2階には行かないようにしたい。でも、わたしの部屋も2階なんだよね……。
「ほう、なかなかの妖気に満ちているじゃないか。素晴らしい」
「そうかもね」
この時間には父も母も仕事で家には帰ってきていない。不登校の兄のために私立中学の高い学費を払い続けている。兄がまた元気に登校してくれるのを待っているのかもしれない。
「1階のリビングで待っていて。お客さん用にジュースとお菓子を持ってくるから」
兄とは会わせたくないから、二人には1階で待っていてもらうようにお願いした。
ところがだ、こんな日に限って兄はリビングでウーロン茶を飲んでいた。
「なんと、この方はいおりのお兄さんでありんすか?」
「そうだけど……」
兄は兄で妹とその友達にはち合わせたことに気まずそうにしている。
「なんと素敵な殿方でありんしょう……」
雪姫ちゃんの言葉には、思わずわたしもすばる兄さんも驚いてしまった。
「確かに凄い負の妖気だ、人間ならせいぜい13年くらいしか生きてないのに、もう死にたそうな妖気を出している」
「兄様、そうことではありしゃんせん、このお人は純粋な魂をしているんでありんす、お名前を聞いてもいいでありんすか?」
「お、俺? 俺の名前は羽瀬川すばるだけど……」
雪姫ちゃんは妖怪だけど超美人だから、兄も名前を聞かれてまんざらではないようだった。
「兄様、しばらくは学校ではなくここを根城にしてはいかがでしんしょう」
「まあ、それも悪くはないかな」
「は、はぁ? 剣士くんたち、わたしの家に泊まる気!?」
「うむ、ありがたく思え。妖怪王が住んでやるのだ」
それっていいことなのだろうか?
「いおり、僕のことを信用していないな。僕が住んでいた間は徳川くんの家庭は代々幸福だったんだぞ」
確かに、社会の授業で江戸幕府は二百年以上長く続いたと学んだけれど……妖怪王って福の神みたいな存在なのかな?
縁起はなんか良さそうだけど。妖怪の王様だし、怖い気もする。
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