第6話 魔王の捨て駒
叫び声の方へ行くと、年老いた男性が血まみれで倒れていた。その近くでは馬車を引いていたのだろう馬も無惨な姿で倒れている。
そして、その周りには甲冑に身を包んだ騎士のような者達が三人いた。
「甲冑に、ショットガンタイプの光線銃……」
なんともミスマッチなファッションをしている。
更に言えば、彼等の後方には数台のオフロードバイクが見えた。
中世の格好をして光線銃片手にバイクで来たってか。あーあ、文明レベルがめちゃくちゃだ。
「なんて酷いこと……」
ステラの漏れた声の後に、甲冑野郎共がこちらに気が付いた。
「なんだ貴様ら!」
甲冑の兜から声を出しているもんだなら、こもった男の声が響き渡る。
「待て、あいつの格好……」
「似ている。魔王様と似ているぞ!」
「殺せ! そいつは敵だ!!」
話し合いの場を持たずして、勝手に敵判定されちゃったみたい。甲冑野郎共がショットガンタイプの光線銃を構えてくる。
流石文明レベルの低い惑星は治安が悪いのなんのって。
こうなっては正当防衛が認められるだろう。
「ステラ。距離を取るぞ」
「わわっ。きゃっ!」
有無言わず、ステラをお姫様抱っこして茂みの中へと入って行く。
「待て!」
「逃すな!」
「撃て! 撃てええ!」
バンッ! バンッ! バンッ!
ショットガンの音が森の中に響き渡る。
俺達は茂みに潜ったあと、木の上に隠れて様子を見ている。
あいつら、適当にバンバン撃ってやがんな。
弾が無限に出るとでも思っているのか。
「ラグナ様。あの武器はラグナ様と同じでは?」
「まぁ、そうだな」
こっちは所謂ハンドガン。あっちはショットガン。武器の種類が違うから正解とは言えないが、この世界の住民からすれば同じだろう。
「同じ武器でしたら数で負けてしまうのではありませんか?」
「大丈夫。見た感じ素人だ」
あいつらはこの惑星の住民と見て良さそうだな。
魔王様とか言っていたし。
あの甲冑野郎達は大方、今回のターゲットが制圧したエトワール城の残党兵ってところだろ。
支配し、従えて、ショットガンを与えたって考えで良さそうだ。
「ひとり見つけた」
手分けして俺達を探そうという魂胆らしい。
個々の力は魔王様より力を授かって強いと勘違いしているんかね。
「相手の力量を見極めるのも実力の内だ」
「うっ!」
甲冑野郎の首から血が吹き出した。オークとは異なった赤い血だ。
「これが長年、
スナイパーライフルなしでも当たる実力の持ち主ってね。
『そこか!!』
他の二人に見つかったみたいだ。バンバンと撃ちながらやって来る。
「きゃ!」
「大丈夫」
ステラをお姫様抱っこして木から降りると、前には、さっき倒した奴の死体を挟んで甲冑野郎が二人立っていた。
「見つけたぞ」
「お前に恨みはないが、魔王様と同じ様な格好をした奴は殺すように命じられているからな」
「おいおい。まるで自分達が俺を殺すような物言いだな」
「その余裕な笑みをすぐに苦しみに変えてやる」
相手二人がショットガンを構えて来る。
「ステラ。魔法を唱えてひとりに当ててくれ」
「で、ですが。このままでは──」
「大丈夫。俺を信じろ」
真っ直ぐステラの方を見ると、彼女はわかってくれたみたい。魔法の詠唱を開始した。
「バカが。魔法如きでこの魔王軍の武器に適うはずがなかろうぞ!」
「死ねえええ!」
カチッ。カチッ。
「「へ……」」
二人の間抜けな声が聞こえてくる。
「ショットガンタイプの光線銃は遠距離には向かない。加えてお前達は何を勘違いしているのか、弾が無限に出ると思っている。光線銃は充電式。ショットガンは威力は高いが消費が激しい。簡単に言えばその武器はもう使い物にはならない」
「くっ!」
「お。剣を持っていたか。でも──」
『ファイアボール』
「ぐあああ!」
ステラの魔法が炸裂した。
すげー威力だ。甲冑野郎が火に包まれて、火だるまになった。
「くっ! よくも!」
「遅い」
頭を撃ち抜いた奴のショットガンが落ちていたので、素早く拾いながら接近する。
「バカめ! 間合いに易々と入りよって」
「ショットガンはこうやって使うんだ」
相手の剣がこちらに届くよりも先に、ショットガンのトリガーを引いてやる。
「が、はっ……」
相手の甲冑に複数の穴が空いたかと思うと、そこから激しく血が吹き出した。そのまま剣を落として倒れてしまう。
「話し合いができたのなら、こんな結果にならなかったのにな」
知性のない生命体が襲って来た場合、正当防衛が認められる。こいつらは人間で会話もできるのに、コミュニケーションを取ろうとしなかった。つまりはオークと同じ扱いで良いってわけだ。
「しかし、旧式も旧式のショットガンを渡されてたか。可哀想に。お前らの言うところの魔王ってのに捨て駒にされてたみたいだな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます