最終決戦!
四天王リベンジ
第13話 固有魔法を覚えよう
先日の戦いで四天王全員を追い払ったと言う事で、アリス、マスコットのトリ、アリスの相棒の木原もも、もものマスコットのマリル、元最強魔法少女の天王寺由香の舞鷹市守護チームは彼女の家のリビングに集まっていた。今後、どうしていくかを話し合うために――。
まず、口火を開いたのはこの家の主でもあり、かつて最強の魔法少女と呼ばれた由香だ。彼女は髪をかき上げながら、集まったメンバーを軽く見渡す。
「四天王を全員倒せたって事は、実力的に魔王の次に強いと言う認識を魔王軍に抱かせちゃった訳だけど、みんなにその自覚はある?」
「当然、あーしはあるよ。実際、魔界にいた時もそのくらいは強かったし」
アリスはドヤ顔で胸を張った。彼女はチートレベルで強いので、この返事も当然と言えるだろう。その実力は誰もが認めるところだったので、調子に乗っているように見えても誰もツッコミはしなかった。
逆に、まだ魔法少女になって日の浅いももは、自分の実力を過小評価していた。
「私は、そんな実力は……」
「だよね。だからももちゃんには更に力をつけてもらう。まずは固有魔法を使えるようになろっか」
「でもあの、他にもやるべ事があるんじゃ……? 私、まだ普通の魔法も……」
由香から固有魔法の習得を勧められたももは恐縮する。しかし、由香はそんな彼女の意思をまるっと無視して話を進めた。
「いい? 固有魔法は切り札なの。これからの戦いに絶対に必要になる。基礎魔法は使えば使うほど勝手に技術は磨かれるから後回しでもいいの。固有魔法はしっかり集中してコツを掴んでないといけない。バトルが激しくなってからでは遅いのよ。つまり、今習得していないといけないって訳」
「わ、分かりました……」
由香の熱意と圧に、ももは押し切られる。彼女の了承を得たと言う事で、由香は改めて固有魔法の説明を始めた。
「固有魔法はその人固有の魔法って前にも言ったと思うけど、正確にはステッキごとの固有魔法なんだよね。魔法少女はパートナーになったマスコットのステッキしか使えないから、固有魔法って言われる訳。それで、その固有魔法はステッキによって全然効果が違う。例えば、アリスちゃんの固有魔法は?」
突然話を振られたアリスは、ももの方に顔を向けてステッキを生成するとそれを握ってみせる。
「あーしの固有魔法は『レッドインパクト』だね。敵のボディに魔力の塊を瞬間移動させて爆発させんの。確実に当てられるし、破壊力は抜群だよ」
「私の固有魔法もそう言う攻撃魔法なんでしょうか?」
「そうとは限らないよ。私が使ってた固有魔法『グリーンインパクト』は治癒系の魔法だったし、物理攻撃完全防御の『グレーインパクト』とか、他には能力強化系の固有魔法もあったかな」
不安がるももに、由香は固有魔法についての説明を続けた。ステッキの真の力を開放する固有魔法の効果は様々だ。効果の幅が広いと言う事は、望んだ効果の魔法を得られるとは限らないと言う事。
ももは、その現実にも軽く絶望する。
「固有魔法って、目覚めてみなければ分からないんですね」
「コアを分析すれば予想はつくけど、確実とは言えないかな。でも必ず戦力になる魔法になる事は間違いないよ。この魔法少女の大先輩が保証する」
由香はドヤ顔で自分の胸を叩く。このリアクションを見て、ももの不安はひとつ消えた。けれど、まだまだ心配な事があるようだ。
「それであの、どのくらい頑張ったら固有魔法が使えるように?」
「あーし、すぐに使えたよ?」
「アリスちゃんはチートだから例には入れない。えっとね、固有魔法は自分の意識とステッキがシンクロしてこそだから、数年かかるのが普通かな。ずっと使えないままの子も少なくないよ」
「ええっ? じゃあ……」
由香から標準的な固有魔法の習得期間を聞いて、ももはまた不安で顔を曇らせた。その表情を目にした由香は、微笑みを浮かべながらサムズアップをする。
「大丈夫! ももちゃんは四天王を倒せるくらい強いんだ。実力も素質もある。コアとのシンクロだってすぐだよ!」
「本当ですかあ……」
「ももちゃんはもうコアの存在を勘で掴んでいるよね? 後はそこにもっと意識を向けるだけさ。自信を持つんだ。君は強い」
「は、はい……」
先輩からさんざんおだてられたももは、ステッキを生成してみる。そうして、コアに向かって意識を集中――。
すると、以前よりもコアのイメージが具体的に感じられた。
「ちょっと、コアの全体像が分かってきた感じがします」
「うんうん、いい調子。続けて」
由香はニッコニコ笑顔でももにイメージし続ける事を求める。なし崩し的に修業に入りかけたところで、ももは不意に作業を止めた。
「そう言えば、固有魔法には色が名前についてるんですね」
「ああ、それね。魔法の名前は直感で思い浮かぶんだけど、色が一番イメージしやすいんだよ」
「私は何色になるんだろう」
「それはももちゃんのステッキ次第だね」
こうして、ももの修行が本格的に始まった。固有魔法覚醒の修行は主にメージトレーニングになる。ステッキを握っての集中。絵的にかなり地味なものだ。由香の監督の元、ももは深く深く意識をステッキに沈ませていく。
少しコツを掴んでからは、外部の刺激に全く反応しないほどに集中していくのだった。
そんな後輩の姿を見ていたアリスも何かしらの決意をしたようで、黙って部屋から出ていった。パートナーの不在に気付いたトリは、すぐに探しに出かける。
「アリスを探してくるホ!」
「うん、そっちはよろしくね」
トリはアリスが家の何処かにいるものと思って飛び回ったものの、どの部屋を覗いても見つからないので首を傾げる。家の外に出たのかもと屋根の上に登って周囲を見渡してみたものの、年頃の少女の姿は見当たらなかった。
「おかしいホ。見失ってからそんなに時間は経っていないはずホ」
そもそも、トリにはアリスが外に出る理由が思い浮かばない。割と一緒にいたものの、まだ全ての行動パターンを把握出来ていると言う訳でもなかった。
困ってしまったトリは目で追うのを止め、ステッキで繋がる超感覚で探る事にする。すると、微かな既視感を感じ取る事が出来た。
「もしかして……」
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