#??? 突然の幕切れ

誰が予見したか、それは突如として爆発した。


悪意の塊がまさに無防備な命たちを貪り食らうようにして、冷徹なる刃を輝かせた。


本来であれば、力あるものさえも、その悪意の前には無抵抗にさせられる。


それこそが魔王たるものの力。


圧倒的な力による支配。


それによって、ロビーには無残に殺されたプレイヤーたちの死体が残されている。


どさりと最後の抵抗者の身体から力が抜け落ちて倒れ伏せる音が聞こえた。


ゼディアはその瞬間を見てしまった。


自身が魔王と戦っている間に、仲間だった者たちは全て一人の謎の人物によって殺されていた。


まだ知らない人達もいたが、決して悪い人間とは思えない人たちばかりだった。


だが、それはこの謎の人物によって破られた。


理解の追い付かない状況、それでも頭は冷静に動け行動しろと語りかけてくる。


憎たらしい、あいつが憎たらしい。


仲間を殺したあいつを殺せばいい。


そう思っていたら、すでに行動していた。


飛びつくようにして、その謎の男に切りかかるゼディア。

しかし、彼の攻撃は謎の男の腕に弾かれる。まるで鋼鉄を叩くかのような火花を散らした後に、謎の男はゼディアの首を左手で持ち上げる。


その膂力は怪物クラスの力強さで、ゼディアの意識をもうろうとさせるのに時間はかからなかった。空気の薄れていく中で、身体に力は入らず、刀を手放す。


無力な金属音が静かすぎるロビーにイヤに広がり鳴り響く。


これが無力。己の弱さを自覚する。


ただ目の前の怪物には、到底人間が叶うような感触はしなかった。

目前で見ているから分かる、常識外の存在としてのオーラ。


そんなものが見えてしまうほどに、目の前にいる謎の人物は格が違うのだ。

恐らくは魔王テネブリスと同格。


「最後に言い残すことはあるか......」


生きも吸えない状況でこいつは俺に最後の捨て台詞を要求してきた。詰まらなそうに聞きやがって。許せねぇ。


だからそう、俺は最後のセリフを決めてこう言った。


「ぜっ...たぁい...お前を......ぶちころs」


言い切る前に謎の人物はゼディアの首を握りつぶした。


バキッバキッと骨が破裂音とともに破壊された。


ボスラッシュのロビーはただ一人の人物を除いては生存者はいなかった。


「これで良かったのだろう?俺は注文通りの仕事はしたぞ?」


静まり返ったロビーに残響のようにその言葉が残る。


返事はないが、その人物には何かが聞こえていた。


「話が違うな......それだと俺がこいつらを殺した意味がない......」


「勘違いするな、俺はお前に完全に付き従うわけじゃない。」


「俺が貴様に協力したのは、あいつを......!」


そこで彼は何かの返事を聞き、崩れ落ちる。


「なんだこれは......っ!刻印?!......どうりで俺を殺せるわけだ。」


「だが、そう易々と魔王がくたばってたら魔王の名が廃れちまう。」


「託すぞ、変人。お前が、カギだ。このクソみたいなデスゲームを終わらせるための唯一の対抗手段だ。」


そういうとその謎の人物はゼディアに何か光る物体をぶつけて倒れた。


その物体はゼディアの死体を包み込み、回転を始める。

肉眼が取られることもできない速度になり、臨界を迎える。

やがてその物体はロビー中を照らして、全てを飲み込んで消えた。


これは一つ幕の終わり。


そして、新たな可能性を背負った最後のチャンス始まりに過ぎない。


ボスラッシュという絶望の壁は未だにそこに鎮座している。







「くははっ!やるじゃねかよぉ塵のくせに。」


赤い閃光が闇を切り裂くようにして激しく動いている。


その瞳孔にはまるで恐れを知らない強者の傲慢が現れていた。


「まぁいいさ、俺を楽しませてくれるならいいぜ?その代わり、飽きたら終わりだがなぁ?待っといてやるから早く来い人間共。」


六対の翼が煽るようにしてはためく。

人とは言えない影が、黄金の劇場を支配しているのだった。


















「やっぱり駄目だったか。でも仕方ないか。あいつらも反則を使ってきたわけだし。そっちがチートするんだったら、こっちもチートを出さなきゃ釣り合わないよね?だってそうじゃなきゃ不公平だし。」


「だから、君が次に目覚めるときには......」


薄れゆく声をかすかに感じ取った気がしたが、すぐにそれが幻聴であって無力に沈んでいくのは変わらなかった。


「大丈夫、君はもう何も失わない。今度こそは君は君の本当の力を発揮できる。」


優しい天使のような声音が俺の身体を包み込む。

溶けてしまいそうなくらいに稀薄だった存在はそれによって救い上げられていた。


「信じることを止めないで、君は人間らしく生きればいいんだ。」


そんな言葉を最後に聞いた気がした。


光が見えてくる。


眩い光に俺は無意識に手を伸ばして追いかける。


掴めそうで掴めない、そんなもどかしさを感じながらも光を手にする。


瞬間、光がはじけて暗闇をかき消した。


最初に視界に入った光景は、トランプを空中でシャッフルしている少年の像だった。


「 職業を選択してください 」


聞きなれないシステムボイスが頭の冴えない鼓膜で鳴り響いた。


要領を得ないまま、適当にその職業を選択する。


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神鶴ゼディア Lv:1 ジョブ:刀使い

HP:20 MP:20 SP:20

■装備品

◇武器

Main:

Sub:

Ex:

□防具

頭:

胴:

手:

腰:

脚:

足:

□アクセサリ

△魔法

▽スキル

PS『アズヴォルトの復讐者』『秩序の破壊者ルールブレイカー

AS


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俺はどうやら刀使いらしい。

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