ソウル・オブ・ジ・オリジン編 第6話「一番目の魂」

僕はある夢を見たんだ。


無機質な灰色の床、空には無数の流れ星が輝く夜空が広がっている。


「ここは、どこなんだ・・・?」


呼吸は苦しくない・・・不思議な感覚だ・・・まるでこの世界にいつも居たような、実家の中に居るような何も疑問に思えない・・・思わせないようにされているような安心感の感覚が続く。


「お前の不出来な力は俺の魂の力だ・・・ガキンチョ。」


声のする方向を見ると僕と瓜二つの姿のもう一人の僕が立っている。


「君は・・・誰なんだ・・・?」


もう一人の僕は静かにこう言った。


「俺はお前だ、ガキンチョ。二度目の物語で全てを終わらせなければ、この世界の全てが終わる。だがまだその時ではない。この物語はオリジンとしての力を次の魂に繋げるために、俺達を犠牲にする。」


「この眼は・・・君たちは何を知っているんだ・・・?」


「俺らはこの世界の過去・・・いや、未来を知っている。だが俺の希望はとうに捨てた。そしてお前たちに夢を託した・・・・・・まだその時ではないが、そのうち思い出すだろう。」


その言葉を最後にこの世界から意識が飛ばされていく。


「・・・ヴァンさん・・・!リヴァンさん・・・!リヴァンさん!」


目が覚めると僕はマルタに抱きかかえられていた。


「リヴァンさん・・・!良かった・・・目を覚ましてくれて・・・。」


「あれ・・・?あい・・・つ・・・は・・・?」


辺りを見渡すと、ベンゲンフルの姿がなかった。


「心配したぞリヴァン!お前があいつにトドメをさしたと思ったらそのまま倒れてたもんだから、急いでマルタが治療したんだ!」


「そうか・・・僕はあいつを倒せたのか・・・。」


「お主が奇妙な眼を発現したと思ったら様子がおかしかったからのぅ。ワシも治療をサポートしたのじゃ!光栄に思えよ!」


「クァトロさん・・・ありがとう・・・。」


僕はゆっくりと身体を起こし身体に異常が無いかを確認したが、異常がないどころか身体がとても軽く感じた。


「お、おい!起きて大丈夫なの?まだ少し休んでいたほうが・・・。」


「大丈夫だよリセル。少し休んだから元気が出たさ!」


そう言ってリセルに笑顔を向けると、リセルはホッとしたような表情を浮かべた。


「お主が寝ている間にこの部屋を調べたのじゃが、先程の魔法陣の痕跡すら見つからなかったのじゃ。まるで魔法陣の全ての力がどこかに吸収されていったような感じじゃ。」


多分・・・この眼が関係しているはずだ・・・。だがそれを伝えてもその真実は与太話にしかならない・・・。


「クァトロさん、この部屋の調査をありがとう。僕は大丈夫だから、早くこの遺跡の奥まで行ってみたいんだ。」


「そ、そうかの・・・まぁワシも調査の一環じゃ、奥まで進めるならワシも止めんよ。」


「ま、乗りかかった船だ、俺も止めないぜ。リヴァン。」


リセルとマルタもうんと頷いている。


僕らは次の部屋へと歩み始める。



~~【創生の霊知の秘境、???層】~~



次の部屋の前に来ると右目と左目の景色が違う・・・。左目では普通の扉として見えているのに対し、右目では禍々しい瘴気が扉から溢れ出ている。


「皆、この先には何かが待っているように見えるんだ。」


「は、はい!私もこの扉から溢れている瘴気が右目で見えています・・・!」


「あたしの右目で見る見識スキルも異常は感じられないわね・・・・・・まぁいいわ、ついていくしか無いってことね・・・。」


「リヴァン、俺はお前を信じている。だからいざって時はお前も俺らを頼れよ!」


「うん、皆!行くよ!」


次の部屋の扉を開けると、その先は一寸先の見えない闇が広がっていた。その光景に圧倒されていると気がつくと僕らは部屋の中に居た。何が起きたんた・・・?さっきまでこの闇自体を見ていただけだったはずだ・・・。後ろの扉を見ると自分たちからどんどん離れていっている。自分たちの足元を見ると白く光る足場が自分たちにどんどん近づいていき、僕らはその上に着地した。


「ここは・・・一体どこなんだ?」


その言葉を口にすると皆が一点を見ながら焦りの表情をしている。皆の視線の方向に目をやると何故か顔をまったく認識することができない何者かが立っていた。その者は僕たちに向かって話し始めた。


「このアビスは君たちの繋がりから産まれた異物。このアビスを止めなければ、この世界は終わりを迎えるだろう。この世界の全ての脅威でもあり、この世界の全てを構成する大切な繋がりだ。」


「アビスだと・・・?この遺跡は混沌勢力と何か繋がりがあるのか!?」


「この遺跡自体は繋がりとしての架け橋に過ぎぬ。この物語の終点には君たちとの繋がりによって生まれたモノが待ち構えている。アビスは君たちにとっての悠久なる約束の地と密接に関わり続けているから存在しているとも言えるだろう。」


「アビスなんてあたしたちからしたらこの世にあってはならない異物じゃないか!」


「異物から生まれる産物は、我らの想像を遥かに超えた答えを導いてくれる。その答えの一つがアビスだ。」


「ア、アビスは混沌勢力の生まれる場所と歴史に書かれていますよね・・・?私達は混沌勢力と密接な関係なのですか・・・?」


「君達の思うアビスとこの世界の認識するアビスは全くの別物だ。世界を構成するアビスは次元の狭間に眠っている。」


「あんたは一体何者なんだ?俺等に何をしたんだ?」


「疑念に思うかもしれないが、今はこれ以上は伝えきれぬ。どうか、その英雄の心だけはなくさないでほしい。」


顔の認識ができない何者かは、けたたましい音とまばゆい光と共にこの空間から消えていった。消えていった何者かの奥に何やら禍々しいオーラを放つゲートのようなものがこの空間を飲み込み続けている。


「あれは・・・まさか!アビス・・・ゲート・・・!?」


「リ、リヴァン・・・。あたしの見識スキルで右目を通してみたらアビスゲートとはまた違うモノとして認識しているの・・・。アビス・オブ・ディメンション・ゲート・・・・・・?何よこれ・・・ありえないほどの空間のマナを吸収し続けているわ・・・!?」


「本には・・・ゲートの中には混沌勢力が守るアビスコアがあるはずです!アビスゲートと似ているのなら、そのアビスコアを壊さない限りゲートは肥大化していきます・・・!」


「どうするリヴァン!俺らでやるしかないぞ!」


「・・・よし・・・皆、行こう!」


皆でゲートに手を伸ばすと、ゲートが僕らを飲み込んでいった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る