ソウル・オブ・ジ・オリジン編 第4話「真実の回廊」

~~【創生の霊知の秘境、一層】~~




遺跡の中へ入ると、そこは見たことのない機械や実験器具、この時代よりも更に発展している古代技術がこの部屋中に詰まっている。


「な、なんですかこの部屋は・・・!?まるで別の世界の機械がいっぱい・・・。」


「あたしも見るのは初めてなモノばかりだね・・・。」


「くぅぅぅ・・・!ヒューマめ!こんな極大な案件をワシに押し付けおって・・・!帰ったらみっちり説教じゃ!」


「なぁリヴァン、何か変じゃないか?こんな文明の機械なんて、とうの昔になくなったはずだろ?ましてや現代は魔法文明だ、こんな動力の触媒も無いような機械が稼働し続けているんだ?」


「確かに変だ、とても・・・すごく・・・・。機械には迂闊に触らないほうがいいかもしれないな・・・。」


この異質な空間には、何故か見覚えのあるモノばかりだ。あの機械も、あの実験器具も・・・・・・まるで今までここに居続けたことがある、そんな気がするんだ。ある程度部屋の探索をしていると、奇妙な本を見つけた。本を開けると、本の中から黒い瘴気が漏れ、瘴気が消えると文字が浮かび上がった。内容はこう書かれている。


生命、奈落、因果、全てを掌握したウロボロスの魂。人族が到達することのない世界の真理を、この秘境に隠した。君達はこの先の未来の全ての苦境を淘汰し、己の限界そのものを覆さなければならない。オリジンよ、我々の計画する物語の最後のページにたどり着く、その時を楽しみにしている。夢の中の伝記から始まる魂の物語の終点には、君達が求むべく答えが待っている。さぁ、この先へ進み己の使命を思い出せ。

我々の最終目的である【ヴェンジフルオリジン計画】についての情報をこの施設に残した。もし詳しく知りたいのなら禁忌に触れた黒い瘴気を放つ発光体を探すことだ。


1ページ目から内容を理解することができない・・・どうしよう・・・。


「リ、リヴァンさん!その本の解読を是非私にさせて下さい!」


目を輝かせたマルタが意気揚々と本にくきづけになっている。


「わぁ~!こんな歴史的文化財の本にお目にかかれるなんて!ナニナニ?ふんふん・・・。内容はまるで聖書に基づくような!うんぬんかんぬん。」


「わぁ~久々に見たぜ、あの遺跡オタクっぷりときたら。」


「う、うん。ああなったマルタは手を付けられないからね・・・。アハハハハ・・・。」


「なんじゃ?あの娘はあのようなモノを見るとああなるのかの?」


「マルタは遺跡となると目がないからね。」


「あんた達、向こうに次の部屋へ進むための扉を見つけたんだが・・・。なんだ?マルタはまたああなっているのかい?」


「いつものマルタって感じだね。気の済むまでさせておけばそのうち落ち着くよ。」


「まぁそれもそうだね。あぁ、とりあえず扉に罠が仕掛けられてるかどうか確認したが、何もなかったわ。」


「ありがとうリセル。助かる!」



数分後・・・。



「み、皆さん・・・。し、失礼しました・・・。」


「落ち着いたようだね、マルタ。その本から何か解読はできたの?」


「一部分だけですが、この本の記述の意味が分かりました。この本は今から約500年前の文明、【千機文明ヒエラコン時代】のモノと分かりました。そしてこの文面は、まるで私達を誘い込んでいる・・・と思える記述が多いです・・・。た、ただ・・・このヴェンジフルオリジン計画については理解することはできませんでした・・・。」


「落ち込むことはないぜ、マルタ。こんな異質な遺跡だ、この先に何か別の謎があるならそれを見つけるまでよ。」


「レインの言う通りだ。みんな!気をつけて進もう!」


次の部屋へ向かうとそこはさっきまでの部屋とは違う、辺りの壁に植物の根のようなものがいたるところに張り巡らされている。だけどその植物は枯れてはいない、まだ生きて根を張っているようにみえる。


「しかし妙じゃのう。」


「何が妙なの?クァトロさん。」


「あぁ、今の今までワシらはこの遺跡に入ってから松明などで明かりを確保せずとも辺りを見渡せる。この遺跡の中は妙に明るいからのぅ。しかもそれがまるで当たり前かのように、今まで疑問に思わせないようにされているような何かを感じるのじゃ。」


確かにそうだ。何故今まで疑問に思っていなかったのか不思議なくらいだ。この遺跡の天井は常に太陽のように明るい光が照らされている。ただそれを一つも疑うこともなかった。なんだろう、胸騒ぎがする。


「一応この部屋の全部の罠を調べたけど、不自然なぐらいに罠が一つもなかったわ。」


「まるで僕らを待っていたかのような感じだね・・・とにかく虱潰しで進もう。」


3つある扉の右の扉を開けてみると、その部屋にはボロボロに壊れているたくさんの本棚が無造作に倒れている。ただ、違和感が一つだけある。その部屋の中央には黒い瘴気を放つ発光体が浮いている。


「さっきの本に書かれている通り、黒い瘴気を放つ発光体があるね。」


「す、少し触るのに勇気がいりますね・・・。念のために魔素の鑑定をしておきます・・・!」


マルタが微量の魔力を発光体へ送ると、少しだけ発行体の瘴気が減ったようにも見える。


「一応魔素による罠などはないみたいです。」


「いつもありがとうマルタ。じゃあ、この発光体に触ってみるよ。」


発光体に触れると黒い瘴気が勢いよく漏れ出し、瘴気が文章を形作っている。


記憶の中に眠るもう一つの人格は、君達の前任者の想いそのもの。君達の足元には何億の死体の山がそびえ立つ。その失われた屍の感情は、全てイシリアルの星玉に吸収されている。行き場の失った魂は我らが管理する世界に保存し、再利用している。願わくば君達の軌跡に立ちふさがる脅威からこの世界を護り続け、失った願いを諦めないでほしい。


前任者・・・なんだろう・・・・・・とても懐かしいような、とても重要なことだったと僕の記憶が呼びかけているような・・・感覚だ。


「リヴァン・・・これは、もしかしたらあの夢と関係があるような気がするんだ・・・。」


「あぁ、もしかしたら、ね・・・。」


「レインの予感は当たっているかもしれないわね、ほら、あそこを見てみな。」


リセルの指差す方向を見ると、部屋の壁に天使の羽のような刻印が刻まれている。


「て、天使・・・様の羽の刻印が・・・先程まであの壁には何もなかったはずです・・・!」


さっきまでなかった天使の刻印は、少しの疑問すらそれがちっぽけであるようなことを何者かに言い聞かされているように、ただそこに存在している。その疑問には答えがない、それを問い詰めるように考えるまもなく次の部屋へと向かった。


この部屋にはたくさんの壊れた本棚が乱雑に置かれている。まるでこの部屋で爆発物でも扱っていたかのように焦げ臭く、埃っぽい場所だと感じる。部屋をくまなく調べると、壊れた本棚をたどると部屋の中央にワザと誘導するように崩れている。


「なんだ・・・?この白い発行体は・・・?」


部屋の中央にはさっきの黒い瘴気とは違う、白く純白の瘴気が溢れ出る発光体が浮いている。その発光体にマルタがマナを送ると文字が浮かび上がった。


赤子の頃、小さき手からこぼれ落ちた涙の欠片は、遠い未来のあなたの手のひらに命の泉として、自分の心を癒やす神薬になる。その眼差しには、人の優しさと、憎しみが投映されている。私はもう一度、あなた達の手をつかまえて引き寄せ、ずっと得られなかった優しいぬくもりをあなた達に送り届ける、それが私の使命であり、最後の願い。かつて君が創造した世界を、いつか平和を取り戻した世界で、ずっと語り合おう。


まるで温かい羽毛に抱かれた赤子に母親が話しかけるような言い回しだ。だが、何故いきなり他の文章とは違う、威圧を感じない優しい文面なのか?その疑問だけが頭の中に響いている。その文章が消えると、発光体から一つの宝石が現れた。


「なんだろう・・・この宝石。」


「リヴァン、触るのは少し待って、今鑑定するわ。ふむふむ、何の力も持たない宝石だけど、こんな宝石は見たこと無いわ・・・。一応安全みたいよ。」


「ありがとうリセル。じゃあ拾っておくよ。」


その宝石を拾うと、背後に何かがいる感覚に襲われた。振り向いても誰も居ない、ここに居るのは仲間たちだけだ。


「リヴァンさん、どうしましたか・・・?」


「い、いや・・・なんでも無いよ、マルタ。」


この遺跡には何かがいる・・・のか・・・?それともこれは僕らの・・・。この疑問の回答はここにはない、とにかく前に進むしか無いだけだ。


「3つ目の扉、開けるよ・・・。」


扉を開けると、そこには地下へ続く階段が現れた。


「地下に続く階段か・・・。皆、気をつけて進むよ!」


階段を降りていくと、目の前に取っ手がない扉が現れた。


「なんじゃ?取っ手が無いんじゃこの扉は開かないではないか!」


「クァトロさんちょっとまって、今探知するわ。ふむふむ・・・なるほど。罠・・・とかはないけど何か妙ね・・・。あら?扉の真ん中に何かが嵌りそうなくぼみがあるわね。リヴァン、何か心当たりはない?」


「今持っているものだと・・・これとかどう?」


さっきの白い発光体からでてきた宝石を取り出しくぼみに近づけると、宝石が吸い込まれるようにくぼみに嵌った瞬間、宝石から扉全体にマナが流れ出し、扉が砂のように朽ちていく。


そして、その先の部屋が現れた。

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