ソウル・オブ・ジ・オリジン編 第3話「緋色の尻尾」
僕らは軽めの昼食済ませ依頼主を待っていると、この店の二階の宿泊棟から一人の狐耳の可愛らしい少女が降りてきた。その少女は店を見渡し、僕らの方へ向かってくる。
「ハッハッハー!お主らがワシの依頼を受ける冒険者たちじゃな!?」
見た目は幼い狐耳の少女なのに、まるで老獪のような口調で話しかけてくるではないか・・・。
「き、君が僕らに直接の依頼を指名した依頼主の人なのか・・・・・・?」
少女は耳をピクッと動かした後に僕らの方をジロジロと見回してくる。
「ふふっ、よかった。今のあなた達は大丈夫みたいだね。」
少女はさっきのような口調から、いきなり普通の・・・心優しい少女のような口調になった。だけど何故だろう、僕はこの子を昔から知っているような、とても遠い記憶が呼び覚まされるような感覚になる。
「申し遅れたのじゃ、ワシはクァトロ=アッカテルド。今回の依頼主なのじゃ!」
「初めましてクァトロさん、僕はリヴァン=ゴールドタイタス。このパーティの剣士をしているよ。」
「レイン=ライトイーグル、一応拳闘士だ、まぁよろしく。」
「あたしはリセル=レッドイーター、斥候と操霊術を生業にしているわ。」
「わ、私はマルタ=アークウィンド・・・です。一応回復魔法が使える神官・・・です。」
「うむ!よろしくなのじゃ!自己紹介も済んだし、依頼の説明に入ろうかのぅ。一週間前ほどじゃったが、ワシの管轄の資料室から見たことのない資料が出てきてのぅ。最初は不審に思ったが、新しい情報はしっかり管理しなきゃワシのメンツが台無しになるのじゃ。その資料には遺跡の名が書かれており、【創生の霊知の秘境】というのじゃ。」
創生の霊知の秘境・・・。初めて聞く遺跡の名だけど何か違和感がある。その遺跡のことを知りたいという気持ちではない、もっと別のなにかの気持ちが沸き立つ感覚だ。
「クァトロさん、その遺跡はどの辺りにあるのかい?」
「遺跡の場所はレウートサクスから徒歩で東に2日ほどで着く場所にあると明記されていたのじゃ。」
「あなた達はもう一度向かうことになる。この秘境ではあなた達の最初の魂を手にするわ。」
また少し、クァトロさんの雰囲気が一瞬変わった。まるで僕の幼少期の母親にあやされるような優しい言葉・・・。何故、この違和感が疑問として残ることはないのだろうか・・・。
「あ、あの。クァトロさん・・・?」
「ん?何じゃ?何か質問でもあるのかの?」
クァトロさんはキョトンとした顔で僕を見ている。
「い、いや・・・なんでもないよ・・・。」
「まぁワシも未開の遺跡になんぞ一人で踏み込む勇気はない。そこで冒険者パーティの君たちが選ばれた訳なのじゃ!」
「な、何で私達が選ばれたのですか・・・?」
「んまぁ、適当に他の冒険者パーティ共に手当たり次第依頼を出して、結果残ったのがお主らだったというだけじゃ。」
手当たり次第って、そんな無責任な方法で僕らが選ばれたのか・・・。
「ワシは遺跡調査班のリーダーだというのに他のやつらからはこんな子供がーとか、諸々の責任はとれるのかーとか、そんな野暮ったい言い訳しかしないモノばかりじゃった。じゃがお主たちはそんな態度を取らなかった、じゃからお主らが選ばれたという訳じゃ。」
僕らは少しガクッと身体が崩れた。
「まぁ良いわ、あたし達も今のところ暇だし。」
「なぁクァトロさんよ、俺らは実力的には中級ランク辺りだ。その遺跡はデカい目的の何かがあるとかは無いのか?」
「ある程度の遺跡の調査は済んでおる、だが内部の様子までは把握できておらぬ状態じゃ。いつの時代に作られたのか、何のために存在しているかは内部を調査せねば始まらぬ。」
「だから俺ら冒険者の仕事って訳か。オーケー依頼主さん、早速その遺跡へ向かおうぜ。」
「わ、私も古代文明には興味があります・・・!」
いつも消極的なマルタがやる気満々になっている。実際のところ、僕もその遺跡には興味がある。というか、行かなければならないような気持ちが好奇心としてずっと頭から離れないんだ。
「なら、そうと決まれば旅の準備をして向かうのじゃ!」
旅の間の必需品を街で買い揃え、僕らは旅路へと向かった。遺跡に向かっている間、いつもなら野営の夜に夜行性の魔物の類が襲ってくることがよくあったが、何故かこの道中では魔物に襲われずに遺跡へとたどり着いた。
目の前には古代文明時代に建てられた、如何にも古い遺跡が佇んでいる。初めて見る遺跡・・・はずなのに、僕、ここを知っている・・・!でも、それがこの先の未来、どうしようもなくなる選択が僕らを待ち構えているような・・・そんな気が・・・。
「リヴァン、お前の思っていること、俺も分かっている。」
レインの頬には汗が伝っている。
「リヴァン、レイン、マルタ。もしかしたらいつも以上の厄介なことが待っているはずよ。気を引き締めて望むわよ!」
リセルは持っている弓をいつでも撃てるように持ち、不安を隠すように真剣な表情をしている。
「わ、私も冒険者の端くれです・・・!私なりに覚悟は決めています・・・!」
マルタは震える手を抑えるために、手に持つ杖をぐっと握りしめている。
「お主らの覚悟は決まったようじゃの。」
遺跡の入り口の前にクァトロさんが立ち、手を向けこう呟く。
「我らを守護する創造主よ、天命を求む礎となる輪廻と共に、オリジンの力を呼び覚ませ!クレアトゥールアウラサージ!」
クァトロさんの向ける手から淡い緑色の光線が現れ、遺跡の入り口に照射されると遺跡の入り口が燃えて朽ち果てる古紙のように消えていく。遺跡は僕らを出迎えるように大きく口を開けた。
「さて、中へ入ろうかのぅ。」
「今の呪文は一体・・・!?」
「あぁ、アレはこの遺跡に入るために資料に記述された・・・・・・。」
クァトロさんが僕らへ振り返るその時、遺跡とその周辺が一瞬にして変わった。遺跡はまるで昨日にも建設が終わったかのように綺麗だけど、何か異質な雰囲気を感じさせる・・・・・・まるで当時にタイムスリップしたかのような光景が目の前に広がっている。
「な、なんじゃぁ!?遺跡が・・・まるで新築のようにキレイになっておるぞ!?」
僕たちの頭の中に生まれた疑問に答えるように、どこからか声が聞こえてくる。
「ここは創生の霊知の秘境、そしてここが最初の因果。全ての始まりの世界を望む碑文は君達の因果の介入を待っている。さぁ、終わりの始まりだ。」
いん・・・が・・・?一体僕らは何に巻き込まれるんだ?その言葉を聞いて身体が震える。ただそれが恐怖や不安の震えじゃない、その言葉の真意を知りたいという期待に近い武者震いのような震えだ。
「クァトロさん、どうしようか・・・?」
「んんぅ~・・・ま、まぁ・・・とにかく中へ入ってみようかのぅ。」
「うん、そうだね。しっかり護衛をするから皆も気を引き締めて望むよ!」
「おう、任せろ!」
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