ソウル・オブ・ジ・オリジン編 第2話「疑念と失意」

夢から一瞬で覚めるように、目を開けるといつも通うハンターギルド「探索の開拓者」の目の前に立っていた。僕はただその場で立ち尽くしていた。先程見たものが夢であってほしい、その考えがずっと頭の中でループし続けている。


震える身体を抑え込むように両手に力を入れると、やっと身体が動かせるようになり、辺りを見渡すとレインたちが僕の背後に立っていた。だけど様子がおかしい・・・さっきの夢で見たあとの僕のような冷や汗をかき、身体を震わせ深刻な表情でその場で固まっている。


「な、なぁリヴァン・・・。お前も・・・あの光景を見たのか・・・?」


いつもの明るいレインが、いつもは見せない見てはいけないものを直視したような不安な表情をしている。


「あ、あたしも・・・見たんだ・・・。多分あんたらと同じ光景を・・・。」


いつも勝気な姉御肌のような性格のリセルが、肩を震わしながら暗い表情をしている。


「わ、私も・・・多分ですがリヴァンさんたちと同じモノを見たような・・・気がします・・・。」


いつもおとなしいマルタは足をがくがく震わせ、持っている杖にしがみつき、震える身体をなんとか落ち着かせようとしている。


僕は平静を保つためにゆっくりと深く深呼吸をした。


「レイン、リセル、マルタ。このことについて何か食べながら話し合いたいんだけど、いいかな・・・?」


三人はゆっくりと頷く、ここで落ち着いて話をしないとこの不安がずっと残り続けるだろうと僕らは思っていたのかもしれない。ギルドの扉を開けると、目の前にはいつもと変わらない光景があり、少し心がホッとする。


「いらっしゃいませー!お食事でしたら、空いている席へどうぞー!」


相変わらずこの店のウェイトレスの活気に毎回圧倒される。僕らは少しもたついたような足取りで椅子に座り、湧かない食欲をひた隠し、全員が同じモノを頼んだ。


「あのさ・・・みんなはどんな光景をみたの?」


曖昧な言い方の質問だが、仲間たちは順を追って説明してくれた。やはり僕と同じ光景、同じ人物が目の前に現れ、同じ文言のようなことを言われたみたいだ。


「なぁリヴァン、この世には信仰する神の使いに天使っているだろ?だけど夢の中で出会った守護天使からは、俺等の知っている神に仕えているとは思えないんだ。」


「わ、私も・・・レインさんが感じた疑問に同意します・・・!私が信仰している樹神エクリア様に仕える天使様とは違い、異質な雰囲気を纏っていました・・・。まるで何かに縛られ、怯え続ける少女のような表情をしているようにも見えました・・・。」


「あたしもそうだし、あんたらもこの現実で何かが欠落しているような感覚は何度も体験しているはずよね・・・。でもそれが何かを思い出せないでいるのよ・・・。ただ、あの夢の中だけその疑問が何故か消えてなくなるような感覚だったわ・・・。」


「謎の空間に、守護天使と意味深な文言・・・か・・・。僕らが夢の中で見た光景は、たしかに全員同じ内容だった。だけどそれが夢のことだとは思えないんだ・・・何故なんだろうな。」


僕らがずっと抱えていた疑問、それが何なのかが分からないけど大事なモノを忘れることのないように頭の中でストッパーがかかっている、そんな疑問を不意に抱かせないように思考に蓋をされているような感覚が、日々続いている。


「四種のミネラルベジタブルとサバイヨンソースのサンドイッチ、四人分おまちどうさね。なんだどうしたんだい?そんな湿気た面してさ。」


料理を運んできたのはこのギルドのギルドマスター「エシャロット・アンレッド」だ。彼女はかつて「レッドアイ」と呼ばれていたかなり有名な冒険者、つまり僕らの先輩にあたる人物である。


「エシャロットさんがわざわざ料理を運んでくるなんて、僕らに何か用事でもあるのかい?」


「あぁ、あんた達に直接の依頼が頼み込まれてな、その依頼を受けるかどうかの確認をしたいんだ。」


「受けるかどうかは依頼内容次第だぜ、エシャロットさんよ。」


「拒否はしてもいいが、遺跡調査班の担当者からの直接の依頼さね。金払いはいいはずよ。」


もしこのまま依頼も受けずにいると、僕は不安で押しつぶされそうになるような気がした。


「エシャロットさん、依頼の内容を見せてほしい。みんなもこの依頼を受けてみないか?」


「はぁ~・・・・・・そうね、今は何かやって気を紛らわしたい気分だわ・・・。」


リセルは横髪を少し撫で、渋々依頼を受けてくれる様子だ。


「リヴァンさんが受けるなら、私もその依頼を受けることに同意します。エシャロットさん。遺跡調査班からの依頼というと、場所は新しい遺跡なのでしょうか?」


「マルタの想像通りさね。じゃあ依頼主を連れてくるから、まぁ詳しい話は依頼主に聞いてみな。」

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