第18話 『ちんもくステーション』 その3
階段を上がると、フロントがあった。
しかし、ここにも、誰の姿もない。
『ベルがありますなあ。』
おじさんが指摘した。
まあ、気はついていたのだが。
ホテルのフロントという場所は、必ずしも騒がしい場所ではない。
たいがいは、粛々と事が進むものである。
が、それにしても、静かすぎる。
フロントの奥で、誰かが動く気配すらない。
ペンを走らせる音さえしないのだった。
つまり、空気を振動させる動きというものが、おじさんと自分以外には何もないというわけであろう。
もしかしたら、宿泊者が居るのではないか?
とも思った。
しかし、そいつは、わからかない。
ベルを鳴らした。
『あら?』
フロントのカウンターの上に張り紙がしてある。
さっきもあったろうか?
『宿泊者名簿にご記入ください。』
『これ、ありましたか?』
『いやあ。気が付かなかったなあ。』
ふと気が付くと、白紙の名簿が二枚置いてある。
『あらまあ。いつの間に?』
『む。まあ、そういうことも、ありうるよな。』
『そうなんですか?』
『なぜならば、ここは、夢の世界だからなあ。』
『あ、なるほど。なんだか、納得はできます。』
ぼくたちは、名簿に記入をしたのです。
ペンを置いた瞬間に、カードキーが二枚乗っていました。
さらに、また、紙が、書きかわっている!
『外出は危険です。駅の外は異次元です。対応可能な方以外は、出るべきではありません。お食事などは、お部屋のタブレットからお願い致します。電話は現在故障しております。悪しからず。』
『至れり尽くせりですね。』
『まあな。地球では、こういうのは、ありか?』
『いや、まだ、見たことないです。有るかもしれません。地球も広いですからね。』
ぼくのキーは、『601』。おじさんは『603』だった。向い合わせの部屋でありました。
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