第17話 『ちんもくステーション』 その2
今回は、きわめてまともに、列車は静かに到着をしました。
『しゅ〰️〰️〰️〰️っ✨』
という音がして、扉は列車の本体から、するりと皮が剥がれるように開いたのです。
『では、わたしは、降りますから。』
と、キオスクのおばさんが言います。
『おらも降りる。見学したいし。あんた、どする?』
『あの、おります。このままでは、あまりに訳が分からないままですから。』
『だな。じゃ、みんなで降りようか。』
ぼくたち3人は、だれも見えないホームに降り立ったのでありました。
『なんと、閑散とした、というか、駅員さんさえ見えないなんて。安全保障が成ってないかも。』
『まあ、そのあたりは、汽車さんが自立してやるからな、あまり、問題にはならないが。それにしても、まさに‘’ちんもくステーション‘’だなあ。ここまでとは。』
おじさんが、感心したというふうに言うのです。
アナウンスもなく、改札場はあるけれども、やはり、誰の姿も見えません。
フリーパスみたいです。
がらんとしていて、一人っ子ひとり見えないなんて、あまりにおかしいだろう?
『ここも、攻撃されているのでは?』
と、ぼくは、ふと、思い当たったように言いました。
『いえ、ここは、こういう場所だと聞きます。』
キオスクのおばさんは、そう言うと、さっそく職場に入り、仕事を始めます。
『なにか、ご希望は?』
いや、たしかに、商品はある。やまほどね。
あんぱんも、ガムも、チョコレートも、アイスクリームも、また、ちょっとしたおもちゃも。
みんな揃っているようだったのです。
『あの、あんぱんを。』
『おらは、いたちょこ。』
『はい。まいどありがとうございます。あなたがた、どうするのですか?』
乗ってきた列車が、まるで音もなく発車していきました。
『次がいつ来るか、わかりませんよ。半永久来ないかも。』
すると、おじさんが答えるように言います。
『たしかにな。しかし、あんたは……』
と、ぼくを指差しながら言うのであります。
『夢が覚めれば、居なくなる。普通な。』
『普通な、ではないこともあるのですか?』
『まあ、ある。夢が覚めない場合だ。この世界から、永久に離れられないことも、なくはない。生きてもいないし、死んでるわけでもない。違うのは、実は、身体がないことだ。あると思っているだけなのだ。夢の中はそうだろう?』
『はあ。しかし、想像しがたいです。』
『なに、夢が終わらないだけだ。逆転するだけだ。なんてことないさ。』
『む。じゃ、どうすれば?』
『まあ、まず、活動の拠点を作るべきだな。宿を見つけなくては。』
しかし、駅の外にも、まったく誰の姿も見えてはいません。
というか、駅の外側は、深い霧に覆われているように、朦朧としていました。
『ここには、誰もいないと聴きます。誰もいない。誰も来ないと。また、何もないとかも。今みたいに汽車が来るのは希だとも。』
『そこまでか? それは、やや意外だな。はははははは。』
『あの、それ、先に言ってください。じゃ、なんで、駅があるんですか?』
『あなたがたが、来たからでしょう?』
『はあ?』
もう、訳が分からなくなった。
すると、おばさまが、『あちら』、を指差したのです。
そこには、『↗️ ステーション・ホテル』と、書いてあって、階段が上に続いていました。
🚉
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