第4話 『出発』2


 『特別周遊列車トータル・ドリーム号の改札をはじめまし。ご乗車の皆様は、改札口においでくらさい。』


 『ほら、きました。ゆきまひょか。』


 その、やや小太りで、あからさまな探偵帽子を被ったおじさんが言いました。


 まあ、しょせん、夢よ。


 と、立ち上がり、改札に向かいます。


 すると、意外と言いますか、けっこう、どこから来たのか、たくさんの人が、すでに並んでいるのです。


 『さすが、夢だなあ。』


 『そうなんれすやねん。夢、あなどったら、なりまへんでぇ。さ、いきましょ。』


 『はあ。』


 どうしてなのか、二人並んで改札を通りましたが、そのまま、二人とも、クリーム車輌に向かいます。


 『あや、あなたも、クリームれすかいな?』


 『まあ。そうです。』


 『そりゃ、奇遇れすなあ。よろしゅうに。』


 『はあ。こちらこそ。』


 なんとなく、怪しいが、物知りらしい探偵さんと二人でデッキを上りましたのです。


 なかなか、綺麗な列車なのです。


 みどりの車体に、太いクリームの線が入り、なんだかよくわからない生き物らしきが描かれています。


 『あれは、一万年後にあらわれる、どーぞー鳥、というものだそうれす。』


 『なんだ、そりゃ。』


 『夢よ、夢。気にしない。』


 『はあ……』



 あなたの夢をのせて、


   儚くゆくか


      夢列車。


   何が出るかはまだお楽しみ。


    

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