夜の公園

 輝が日々の苦悩と対峙する中、宇都美は彼の精神的な支えとして静かにそばにいた。ある涼しい夜、彼の気分転換を図ろうと、宇都美は輝を近くの公園に誘った。二人は公園のベンチに腰掛け、夜風に吹かれながら、心を開いて話す時間を持つことにした。


「輝、ここに来て良かったかな?」

宇都美が穏やかに尋ねると、輝は疲れた表情を少し緩めてうなずいた。

「うん、ありがとう。サッカーも、クラスの中でも、うまくいかないことばかりで…ここは少し落ち着くよ。」


 公園の静けさが、輝の心にも少しずつ影響を与えていった。彼は深くため息をつきながら、サッカーでの最近の挑戦だけでなく、クラスメイトとの関係にもついて宇都美に打ち明けた。

「何かもう、全てが重くて動けないんだ。パス一つ出すのも、前みたいに自然にできない。サッカーだけじゃなくて、クラスの中でも孤立してきてるんだ。誰ともうまく話せないし、友達との間にも距離を感じるようになってきた。」


 宇都美は輝の隣で優しく手を握り、彼を励ますように言葉を続けた。

「輝が今感じているプレッシャーや不安、それはすごく重いものだと思う。でも、誰も輝が一人でそれを背負う必要はないんだよ。」


 夜空を見上げながら、宇都美は更に心を込めて話し続けた。

「時には立ち止まって、自分を見つめ直すことも大事だよ。サッカーへの情熱はみんなが見ているから、無理はしないでね。クラスでのことも、輝のせいじゃない。」


 輝は宇都美の言葉に深く感謝し、彼女の存在がどれだけ自分にとって大切かを再認識した。

「宇都美、本当にありがとう。こんなに支えてくれて…」

彼の声は震えていたが、その震えには感謝と安堵の感情が混ざっていた。


 しばらく二人は言葉を交わさず、ただ静かに夜の公園を楽しんだ。最終的に、宇都美の励ましによって、輝は少しずつ自分の中の重荷を解放し始め、再びサッカーへの情熱を見つめ直す勇気を得ることができた。


「これからも、辛いことがあったら話してね。私はいつでも輝のそばにいるから。」

宇都美のその言葉は、輝のこれからの道を歩む上での大きな支えとなった。

「5月でも夜はまだ寒いね。お互い風邪ひいちゃいそう。」

そう宇都美が言ったので、輝は自分が来ていたパーカーを貸してあげた。

「今日はありがとう。なんか元気出た。風邪ひかないうちに帰ろう。」

そう言って公園から帰ることになった。公園からの帰り道、輝は少しだけ前向きな気持ちで未来を考えることができたように感じた。

結局宇都美は次の日、風邪で寝込んだらしい。

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