前のエピソード――変化

　サッカーのピッチだけでなく、学校の日常でも輝の相貌失認は彼の人間関係に影響を与えていた。クラスでの彼の立場は、かつての人気者から次第に孤立した存在へと変わり始めていた。

　輝のクラスメイトたちは、彼が事故から戻ってきた当初は同情的で支えようとしていた。しかし、輝が彼らの顔を識別できないことで、日常のコミュニケーションに支障をきたすようになった。例えば、クラスメイトが輝に話しかけたとき、彼がすぐに反応しなかったり、間違った人に返事をすることが頻繁にあり、それが誤解やいら立ちを生む原因となった。

　ある日、クラスのグループプロジェクトで、輝はチームメイトの一人を誤って別の名前で呼んでしまい、そのクラスメイトは公然と彼を非難した。

「輝、何でいつも名前間違えるわけ？それとも僕たちをちゃんと見てないのか？」

という言葉がクラスの前で投げかけられた。この出来事は、クラス内での彼の孤立を加速させた。

　その後、輝に対する小さな誤解や不満は徐々に積み重なり、クラスメイトたちの間で彼に対する冷たい態度や避ける動きが目立つようになった。昼休みも、彼は以前は囲まれることが多かったが、今では一人で過ごすことが多くなった。輝がノートを忘れた日に、以前なら誰かが貸してくれたものが、今では誰も声をかけようとしない。

　このような日々の中で、輝は自分が以前のようにクラスの一員として受け入れられていないことを痛感し、ますます自己疎外感に苛まれるようになった。彼は自問自答を繰り返し、

「本当に自分はここに属しているのだろうか？」

と悩んだ。彼の学校生活は、かつての楽しい記憶とは裏腹に、今では彼にとって別の顔を持つ場所となっていた。