第10話 ライバル
目の前には柚葉という名前の神様がいる。
見た目だけだと美人なお姉さんだ。
「なぁ、咲と言ったか?」
「あっ、、え?」
「名前だよ名前。咲じゃなかったっけ?」
「あってますけど、、」
「そうか!ならよい!ところで咲。お前隼人のこと好きだろ?」
「まぁ、好きですけど、、、」
「そーなんだ」
「あっ」
「ん?」
「あぁぁぁぁぁぁ!!!言っちゃった!!流れで言っちゃった!!」
恥ずかしさのあまり手で顔を覆い赤くなった顔を隠す。
「言っちゃったな!」
とゲラゲラ笑う神様。
「本人いなくてよかった、、」
「よかったな!」
「笑い事じゃないわよ!!」
「はっはっはっ」
本当にペースが狂う、、。
彼女の手のなかで踊らされてるような感覚になる。
少し反撃しよう、、そうでもしないと気が収まらない!
「そういうあなたも隼人のこと好きなんでしょ?見たらわかるわよ」
「なんだ、、バレてるのか」
「えっ?」
私は予想外の言葉に思考が一瞬止まった。
「めちゃくちゃ好きなんだ。けど、諦めなきゃいけない、、そんな状況」
「諦める、、ですか」
「まぁ、色々あんのよ」
そう言って笑う彼女の笑みは、私まで心が痛むようなもので、空気は少し重くなった。
それに気まずさを感じたのか柚葉は口を開く。
「なっ、なぁ咲?どんなとこが好きなんだ?」
「え?」
「隼人のだよ!好きなとこ。せっかく同じ人を好きになったもの同士なんだし語り合おうじゃないか」
そうやって場を盛り上げようと必死な彼女を見て、私は可愛らしいなと思った。
そこからは、二人でずっと語り合った。
敵対していたのが嘘かのように会話は弾んでいた。
どんなとこが好きかとか、ここはなおしてほしい、、みたいなことまでたくさん話した。
時間がどれくらい経ったのだろう、、、。
玄関の開く音がして
「ただいまぁ」
と話題にしていた人物が帰ってきた。
その数秒後に私達の部屋の扉が開く。
「仲良くしてるか?」
「もう親友みたいなもんだよ!ねぇ、咲」
「そうだね。柚葉」
二人で顔を合わせ笑い合う。
そんな二人をみて隼人も嬉しそうだった。
「あ、ほら咲。ジュース」
「あ!そうだったそうだった。ありがとう」
「忘れてたのか!?人が暑い中買いにいってやったのに」
「謝ってるじゃない、、てかこれ私の好きなやつ!良く覚えてたわね」
「そんくらいは覚えてるよ。咲のことだし」
「そっ、、そう、、」
「ちょっと俺トイレいってくるわ」
「わかったー!元気にしてこいよー」
「俺は子供かよ!」
そうやって隼人はまた部屋を出ていった。
「なぁ、咲さん」
「なによ柚葉」
「あれはたらしだよな、、」
「そうね、、改善すべきだわ」
とそんな会話をしつつ、私達は隼人の帰りを待つのだった。
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