第8話 一歩
先輩との作業が終わり、僕は帰路に着いていた。
部活動の帰宅ラッシュとは被らない良い時間に帰宅できたので、陰キャの僕からしたら小さな喜びだ。
校門に差し掛かったところで見知った人影を見つけた。
「なにしてんだ?咲」
「ふぇっ!?あっ、いやっ、、一緒に帰ろうかなぁ、、と」
「誰と?」
「あんたとよ!」
そう言って軽く殴ってくる咲。
どうしちまったんだ、、こいつ、、。
「お前も珍しいことするもんだな」
「霞からもからかわれたわよ、、、まっ、まぁ別にいいんじゃないの?あんたにとっても」
「どこら辺が?」
「どこら辺がって、、、あんたが女の子と帰れるなんて、クジラから両手生えてバク転するくらいありえないでしょ?」
「それよりは確率上だろ!」
とそんな言い合いをしつつも僕らは喧嘩になることがない。
性格こそ正反対だが、なんだかんだお互いのことを思いやれているのがずっと仲良くいれている理由なのかもしれない。
そんなこんなで他愛のない話をしているうちに僕の家まで着いた。
「じゃっ、、じゃぁね」
名残惜しそうにそう言ってくる咲に笑みをうかべつつ
「おうっ、たまには一緒に帰ろうな」
なんて提案をする。
「まっ、まぁ?たまには帰ってやらんこともないわよ!」
なんて満面の笑みで返答する咲。
こういう所はかわいいよなこいつ。
「何ニヤニヤしてんのよ!気持ち悪いっ!」
といつも通りの言い合いをしていると
「ゲームやるぞ!!隼人!!」
と聞き覚えのある声と共に玄関の扉が勢いよく開いた。
面倒なことになりそうだなと思いつつ、声のした方に視線を向ける。
「ねぇ隼人、、、だれ?この女の人」
あー、ヤバイ状況ですね、、これは、、、。
「ん?私のことか?聞いて驚くなよ?神だ!神なのだ!!」
かなりヤバイなぁ、、、。
「隼人、、、悩んでたんだよね、、わかった。私が何とかしてみるから」
なんか勘違いしてるな、、この子。
「いやっ、、超能力とかつかえるんすよね、、その人」
「あぁ、、、隼人ぉぉ、、ごめんねぇ、、私が相談に乗れなくて、、不甲斐なくてぇ、、」
「大丈夫か?涙出とるぞ、お嬢さん。ほれ、ハンカチハンカチ」
「「誰のせいだよ!」」
と能天気な神様に声揃えてツッコミをいれた。
僕と柚葉からまた後に説明する。ということで話は落ち着いたのだが、やはり腑に落ちないとこもあるようで柚葉に疑いの眼差しを向けつつ咲は帰っていった。
「なにしてんだよ!柚葉!」
と注意したのだが、柚葉は咲の後ろ姿を見つめて何か考えているようで僕の言葉はスルーされた。
「なぁ、隼人」
「どうしたの?」
「私は幽霊と同じで普通は見えないんだ。見えてもうっすら影が見えるくらいのはずだ。」
「そうか、普通の人なら扉がただ開いただけみたいな現象が起きるのか」
「そうなるはずだったんだがな、、、咲、、だっけか、、やつは霊感がとてつもなくあるな」
たしかに結構前だけどそんな感じの話してたような、、。
まぁ、なんにせよ今度の説明に向けて色々考えておかなければいけないな、、。
「まぁ、隼人考えるのはあとにして早くなかに入ろう!さっきも言ったと思うが、今君は玄関前で独り言言ってるヤバイやつだからな!」
「あっ」
気づかなかったが通行人にめちゃくちゃ見られていた。
「なんでもっと早く言わねぇんだ!」
「今のも独り言だぞ~!」
その日、僕は今まで出したことないような速度で玄関に入るのだった。
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