第7話 読書姫

放課後。

今日は図書委員の仕事があるため、図書室に向かっていた。

ガラガラと少し古くなった引き戸の扉を開け、中にいる女性へと挨拶をする。

「こんにちわー。」

挨拶をした相手は図書委員の先輩。秋晴このは。

ウェーブがかった黒髪に人形のような顔立ちの美人だ。

先輩はその挨拶に気づいたのか、本を読むのをやめてこちらに言葉をかけてきた。

「おー、きたか。今日はこの本を読んでいるのだが、、」

そう言いつつ先輩は僕の方を向いて、固まった。

「え、、?」

と僕が固まった先輩をまじまじと見つめていると

「すみません。人違いでした。」

と、そう言って本に向き直る先輩。

「僕ですよ!?僕!僕!」

「なんだ、、ボクボク詐欺か?新手だな。」

「新手だな、、じゃないですよ!何忘れてんすか!」

「急に騒ぐんじゃないっ!」

と急に図書委員らしいことを言ってくる先輩。

「あ、すみません」

「まぁ、おふざけはこれくらいにして、、、お前は隼人で間違いないのか?」

「そうですよ?」

「いやぁ、、嘘だぁ、、」

「嘘じゃないですって!」

「じゃぁ、私がずっと治したいと思っているクセは?」

「気が緩んだときに一人称が自分の名前になること。」

「グッ」

ダメージ受けてない?この人。

「じゃ、、じゃぁ最近私がやらかしたことは!?」

「バックに何もいれず、学校に登校してきたこと。」

「グッ」

ダメージ受けてるな。この人。

「じゃっ!!じゃぁ!!」

「もうやめた方が、、」

「やめられねぇ戦いだってあんだよ?少年。」

「えぇ、、」

「いくぞ!?私の秘密はなんだ!!?」

「読書姫とか言われてるけど、読んでるものほとんど漫画。」

「アァァァ!!うわぁぁ!!私のイメージがぁぁぁっ!」

「あのぉ、、」

「ひっく、、うぅ、、、」

軽く泣いてんだけどこの人。

「どうですか?これで僕が僕である証明、、、できましたか?」

「うん、、私ほどの美少女にそんな外道なことができるのは君しかいないよ、、、」

「不本意だ、、」

「まぁ、兎にも角にもかっこよくなったねっ」

「そ、、そうですかね?」

照れてしまう。普段人を褒めない、なんなら寄せ付けない先輩からのお褒めの言葉だ。

「あ!あと家じゃちゃんと小説だからね!?学校で漫画読むスリルが楽しいから読んでるだけで、、」

「怒られますよ?いずれ」

「いずれなんて早々こないよ?少年」

「そうだといいですけどねぇ」

とそんな会話をしつつ、僕は図書室を見渡す。

「あれ?他の先輩は?三年生とか」

「二年の私と一年の君だけだよ?」

「またサボってんすか?みんな」

「私が図書室ばっか行くから任せていいって思ったんだろうね。まぁ、仕事できない人がいても邪魔なだけだし、やる気ないヤツが増えれば時間も逆にかかるものだよ」

静かに怒る先輩に恐怖を感じつつ、僕も作業に取りかかる。

本を指定の位置に戻す。そんな単純な作業だ。

だが、なかなかに骨の折れる仕事でもある。

「これ俺がいないとき先輩が一人でしてるんですか?」

「うーん、手伝ってくれる子もいるけどサボりが多いね。これ以外にも仕事はあるのだけれど、、」

「大変ですね、、」

「そんなこともないよ?本好きだしね」

と先輩は言い、少し間を置いたあと

「隼人くんがいつも来てくれると私うれしーんだけどなぁ」

なんてことを呟く

「はいはい、人いなさそうなとき来ますね」

「えぇーいつもがいいですー」

そんな勘違いさせるようなことばかり言う先輩を心を押し殺しつつ

「早く作業しましょう?」

と一蹴し、僕らは黙々と作業を続けるのだった。





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