第6話 咲
幼馴染みが髪を切った。
前までのどんよりとした雰囲気も消え、表情が明るくなったような気がするし、似合っているなぁと彼の横顔を見ながらそう思った。
学校に着いた彼は、いろんなやつに声をかけられ、クラスの女子の彼を見る目も変わっていた。
私だけが知っているはずのものが、皆に知られてしまった。
彼のいいところの一つが見つかってしまった。
嫌だ。
そう思った。
恋人でもなんでもないやつの独占欲なんて正直寒気しかしないし、気持ち悪いなと自分でも思う。
そんな自分がほんとに嫌いで、みんなに好かれる彼のことが好きだし、、嫌いだ。
乙女の心は複雑なのだ。
めんどくさいと言われてもそれが私だ。
今さら変えるつもりはないし、変えようとしても変わらない、根っこにあるものなのだと思う。
そんなことを考えながらもまた目で追ってしまっている。
「焼きもちかな?」
「あ?」
「怖い怖い」
「あんたいちいちうるさいのよ、、ほんとに」
「あんたってなんだ!あんたって!俺には十村霞っていう立派な名前が!!」
「名前に負けてるわね、、あんたの人生」
「ひどくないでしょうか咲様。私何かしましたか?」
「別になんもしてないけどさ、、」
そういいつつ、また彼のことを目で追う。
「まぁ、でも気持ちはわかるよ?昨日までふつうに話せてた距離なのに今となっちゃぁクラスの人気者だしな」
「何日か経てばどうせ、つまんないやつってのがバレるわよ」
「そうだといいけどねぇ」
私は彼から目線をはずし、窓から外の景色を見る
「いつまでも変わらないことはないのね、、」
「え?なんて?」
「なんでもいーのっ」
そう霞の問いに返事を返し、いつもより居心地の悪さを感じる教室から逃げるように出ていくのだった。
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