第3話 恋

「わっ!もうこんな時間なのか」

と僕の腕時計を覗き込んで神様は言った。

時間というのは早いもので、神様と知り合いもう数時間が経ち、時計はもうすぐ夜というとこまで針を進めていた。

「はやいですねぇ」

「もうちょっとゲームしてたいが、さすがに親が心配するな、、」

「今日はお開きですかね」

「そうだなぁ、、、」

「そんな寂しそうにしなくても、、、もう会えないって訳でもないんですし、またゲームとかしましょうよ」

「ほんとか!してくれるか?」

目を輝かせてそんなことを言う神様に微笑を浮かべつつ、

僕は首を縦に振った。

「じゃっ、じゃぁ、、友達、、、というものだなっ!!!私の事は、、そうだなぁ、、柚葉とでもよべっ!可愛い名だろ?それから、、」

早口で物事をひとりでに進めてしまう神様を右手で制止しつつ

「ちょっ、ちょっとまってください!?あなた神様なんですよね?僕はそれに仕えるべき立場で、、」

と僕が言葉を紡いでいると

「そーゆーのは置いといてだなっ!」

と逆にまた遮られてしまった。

「でっ、、でも、、」

「細かい事気にしててもモテないぞ?」

「、、告白されたことくらい、、ありますよ??」

「え?マジ?」

「なんで疑うんですか!!ここで嘘ついても虚しいだけでしょ!?」

「あぁ、てっきり女性経験ゼロのクソガキかと、、」

「あなたの中で僕はどんな印象なんですか!?」

「あっ、でもさ」

「どうされました?」

「その告白って、、いつの話よ」

「、、、幼稚園、、」

「あ、、あぁ、、なんかごめんね。やっぱり、、そうだよね」

「泣いていいですか?」

「私が悪かったよ、うん。」

心の涙腺はもう崩壊寸前である。

「だっ、第一僕に彼女がいようがいまいがあなたには関係ないじゃないですかっ」

「敬語禁止。あとあなたではなくて柚葉な」

「あっ、はい」

急に真剣な顔になるなよ、、びっくりする、。

「君にはモテてもらわないと困るんだ」

「そりゃどうして?」

「んー、難しいが簡単に言うと君が子孫を残さないと私は消えてしまう。」

「え?」

「本来神というのは多数の信仰の上で成り立つものだ。それを君の一族全てに背負ってもらっているのが私だ」

「背負ってもらっている?」

「そそ、君の一族で私という存在をこの世にとどめているんだ。そのかわりに他からの信仰ではこの世に体をとどめられないというそんな存在になっているののだよ」

「でも、僕は崇拝しているわけでもないし、お供えとかそれっぽいことしてませんよ?」

「実際はそんな固いものでもなくてな。私という存在を知っていればいいのだよ」

「つまり僕の後世に柚葉の存在を教えていかなきゃいけないってことか」

「そーなるな」

「じゃぁ、なんで親は僕に教えてくれなかったんだ?」

「そりゃ、責任感で人と恋をしてほしくなかったんだろうよ。私と言う存在がいようが、君が神守の一族であろうが、君の人生なんだからな」

僕はその言葉で腑におちた。昔から、子供思いのいい親だからな。そんな考えになるのがあの両親なら自然とも言える。

「そこでだ。」

「はい?」

何か言おうとした柚葉は言い留まり、

「いや、今度でいいや。また来てくれ。君の親が心配してるよ」

「あっ、時間!すっかり忘れてた、、」

「今は外に誰もいないからチャンスだぞ」

「ありがとう柚葉、また遊びに来るね」

「おう!まっとるぞ」

そんな挨拶を交わしつつその部屋をあとにするのだった。

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