第4章 神永未羅の場合 第53節 ニヒルな王子さまっ♥

「おい兄貴、負けちゃったのかよ!」


プレハブ小屋の入り口に、しらさやの刀をかたに負った、背の高い男が立ってた。

白鞘って、そうしてないしらの鞘のことね。

空いた左手は上着のポケットに。

アゴを引いて立ち、目は上目使い。

心持ち足を開く。

ポージング、カンペキ。


男はせて、ちょうはつで、足が長くて、色が白くて、きょてきで、ちょっと不良っぽくて、足が長くて、長髪で、虚無的で、まとめればイケメンだった。

こっちの方には心が動いた。


ルスヴン「ひかえよ、レイ。バートリはくしゃくのレディ・エリザベート様のおんまえなるぞっ!」

見て分かるくらい、ルスヴンはイラッとしてた。


エリザベート様「ああ、良い良い。こういう所が、いかにも力士らしいのじゃ。」

バカにしてない? その言い方。


レイはゆうな身のこなしで、エリザベート様の前にひざまずいた。

うーん。今度はきゅうていふうか。

えっ、過大評価?

そうかなあ。


レイ「エリザベート様、兄の無礼、私めの調ちょうほう、合わせておいたしまする。いかようなばつでも、おあたえくださいませ。」

きゅんきゅん。


エリザベート様「無礼講でよいぞ、レイ。あの緑の女相手では、宮廷風の作法とも言っておられまい。それとも、おまえ。このしろゆずるか? すぐ出て行くか? どうなんじゃ? おい、返事しろ。」

これってアングル?

ちょうはつしてんの?

エリザベート様にプロレスが伝染した?


ザ・クラッシュ「レイだっけ? 来いよ、せっぽち。ノーガキはリングで垂れな。」

プロレスって、こういうモンなんだけど、ちょっとずかしい。

レイは、この辺の事情は分かってるみたいで、ゆうこいてニタニタ笑ってる。

ますます恥ずかしい‥‥。


レイ「気が進まんなあ。こう見えて、文科系なんでね。」


鞘をはらったき身の日本刀を、レイは上向きに立てた。

スタンドも使わず。

そしてピョンとジャンプして、刀の切っ先に、あぐらをかいて座った!


ザ・クラッシュ「なんだ、そりゃ。マジックか? それともヨガか何かか?」

レイ「まあ、そんなトコだ。手品のタネを知らないアンタにはハンディがあるなあ。どうだ、そこのさんとタッグを組んでは?」


私「私、やるよっ!」

私以外の全員が「なんだ? コイツ」と言う視線を投げつけて来たが、こいするおとは、そんな細かいこと気にしない。


レイがニヒルな笑いをかべながら言った。

レイ「じゃあ、野戦にしないか? ルールのあるスポーツじゃ、どうも本気になれなくてね。」


マーキュリーの姿は、いつの間にか消えてた。

イケメン対決、見たかったな。

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