第4章 神永未羅の場合 第48節 私のラバさん

少し歩くと、マーキュリー大先生が待ち構えてた。

なんか、ポニーみたいなのを引き連れてる。


エリザベート様「おお、マーキュリー。気が利くな。そりゃ、ラバか。」

ラバって、ロバと馬のあいの子の、使えきじゅうのことね。


マーキュリー「はい。馬の手配が間に合いませんでしたので。」

エリザベート様「良い良い。人数分、あるか?」

マーキュリー「はい。荷物分を除き、五頭、確保してございます。」

エリザベート様「なんじゃ、おまえは歩きか?」

マーキュリー「はい。先導役を務めますもので。」

へえ。私にも一頭、割り当ててくれてたんだ。

ゆうたいだからと言う理由で、何かと後回しにされるの、私。)


ニーナ「私、ラバなんて乗ったことないよぉ。」

ザ・クラッシュ「徒歩でまっすぐ行った方が早いんじゃない?」

マーキュリー「まっすぐとなると、とてつもない難路になるぞ。フリー・クライミング、やったことあるのか?」

マーキュリーは、ちゃんと、こっちの方を向いて物を言った。

私たちのことを(とにも角にも)仲間と認めてくれたらしい。

エリザベート様が引き取ってくれた。


エリザベート様「フリー・クライミングは、さすがにな。回り道して、何日かかる?」

マーキュリー「急いでも三日を要するかと。」

エリザベート様「じゃあ、今日のところはラバに乗る訓練じゃな。こりゃ、ニーナ。不服そうな顔をするな。ラバを使うのは命を守るためだと思え。」

マーキュリー「自転車より簡単だよ。ただし、ラバに、なめられるなよ。心配するな、大人しいのを選んでおいたから。」

マーキュリーはニーナの目を、まっすぐ見つめて、優しい言葉をかけた。

うーん。女を乗りこなすのもいな、こいつ。


確かに、一日でラバ乗りに慣れた。

「おしりが痛くなるのは姿勢が悪いからだ」と言われた。

自転車とは一味ちがうバランス感覚が必要だったのね。

「荷物といっしょに、ゆっくり進むから、並み足だけマスターしておけば良い」とも言われた。

並み足って、車で言えばロー・ギアのことね。


き火を囲んで夕食を済ませると、マーキュリーは、またしても「どろん」しちゃった。

下心アリアリの男よりマシだけど、こんな夜中に、ほっとかれるのもなあ。

ニーナも、ザ・クラッシュも、そして未羅みらまで(!)おんなじことを考えてるみたいだった。

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