第4章 神永未羅の場合 第43節 メイド全員に退職金なしの解雇通告

それから半年ぐらいの時間がアッと言う間に過ぎた、ある朝、ご飯が済むと、エリザベート様は私たちを全員集合させた。


エリザベート様「別れの時が来たようじゃ。立ち去るがよい。」


未羅みらが口を開いた。何か決意したような顔をしてる。

未羅みら「それではエリザベート様がとがめを受けませぬか?」

エリザベート様が、ちょっぴりごきょうの色を示し遊ばされた。

エリザベート様「大事ない。私をだれだと思っておる。」

相手の顔色を見ず、未羅みらは言葉を続けた。このずうずうしさ、未羅みらでなけりゃ、出来ないよね。


未羅みら「そもそもエリザベート様は、私たちを足止めされるお積もりはあったのですか?」

エリザベート様「無い。時間かせぎに、ちょっと、こき使ってやろうと思ったまでのことじゃ。」


私、ちょっと前から「おかしい」と感じてた。何かを「待っておる」とか、今の「時間かせぎ」とか。エリザベート様に、何かせっぱくした問題が起きつつあって、私たちのことなんか、どうでも良かったんじゃないかしら。


ひと呼吸置いて、未羅みらが口を開いた。

未羅みら「無礼を承知で申し上げます。私どもで出来ることであれば、どんなことでもいたします。どうか、えんりょなくお申し付けください。打ち明けて頂かなければ、相談に乗りようがありません。」

エリザベート様が、未羅みらの顔をジッと見つめた。

こういうことは決してなさらないお方なのに。

固い表情のまま、エリザベート様はお口を開かれた。


エリザベート様「ありがとう、未羅みら。だが、おまえたちにも、やらねばならぬことがあるのであろう? ちゃんと聞いておるぞ。私の考えは『賛成はせぬが、じゃもせぬ』じゃ。だから、こんな所でつまづくな。」

ニーナ「では、私が残ります。いや、お供させてください!」

ニーナが割って入った。エリザベート様、ニーナのことをあまやかしてたな。

案の定、エリザベート様は未羅みらとは打って変わって、優しい表情をかべて、こう言った。

エリザベート様「ありがとう、ニーナ。だが、その気持ちを受け取るワケには行かぬのだ。『使用人の安全を保証する』と言う、主人として当然の義務が、もう私には果たせそうもないのだから。」


結局、私たちはニーナのエリ首をつかむようにして、どうくつの反対側に出た。

前に聞いてた通り、トンネルみたいな直線コースだった。


洞窟の中では気付かなかったけど、ニーナはあかおにみたいな顔しておこってた。

私たちの手をりほどいて、ニーナがタンカを切った。

わざわざ太陽に背を向け、逆光になるようにして。

ははあ、もう「ケンカ・モード」なんだ。


ニーナ「私、やっぱり、もどるよ。いちけしてゴメン。裏切ってゴメン。でも、みんなには私を行かせる義務があるんだ。」

さすが、私の「一人だけの軍隊」。ホレ直しちゃったね。


未羅みら「分かった。行っていいよ。」

それを聞くが早いか、ニーナはけむりのように姿を消した。

私は未羅みらみぎうでをつかんだ。

私「ねえ、本気?」

未羅みら「本気なワケないでしょ。ここじゃ、ああ言うしかないから、時間かせぎしただけ。さあ、私たちも中にもどるよ。」

ザ・クラッシュ、そして私、「さすが未羅みら司令官!」

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