第4章 神永未羅の場合 第39節 野生のロバみたいな女。それが私

ある日ある時、エリザベート様のおんまえで、私は何かにつまづいて転びかけた。

両手におぼんささげ持ったまま。


たまたまエリザベート様はごげんうるわしく、おかげで私は命拾いしたのでございます。

(いや、死んでますけど。)


エリザベート様は口のはしで笑って、めずらしく私の方にお顔を向けた。

エリザベート様「イスマエル、また、つまづいたか。」


さすがの私もギョッとした。

どうして私のハンドル・ネームを知ってるの?


エリザベート様は笑みをかべたまま、言葉を続けた。

(敬語モード、半解除)

エリザベート様「どんな事情があるのか知らんが、自分の親をうらむのだけは、やめておけ。自分の家族の者を敵にするな。家族以外の敵ならゆるすことも出来るが、親をにくむと、自分の半身が反乱を起こすからな。」


これまで、色んなれいのうりょくしゃと会って来たけど、ここまでまれたのは初めてだった。

ずかしいのと、くつじょくとが、一度にし寄せて来た。


エリザベート様「そんな顔をするな。私までトバッチリを食っては、かなわぬ。これだけは言っておく。おまえが、こぶしをりかざすから、相手もそうするのじゃぞ。」


ここまで言われちゃ、相手が「血のはくしゃく夫人」だろうが、なんだろうが、反乱だ!

革命だ!


私「私は戦うために生きておりました。死んでも、こうやってよみがえって戦っております。」


エリザベート様はロコツに「どうでもいい」と言う顔をして、視線を本にもどされた。

エリザベート様「フン、まあ、よかろう。おまえの後ろにいるインドっぽい女神に、せいぜい仕えるがよい。まちがっても、逆らう気を起こすなよ。」

見えてたんだ、てん様のことが。


私がエリザベート様から直接、踏み込んだ、お言葉を頂いたのは、後にも先にも、これ一度っきりだったのでございます。


私はエリザベート様にとっては「ホントにどうでもいい」存在だったの。

なぜなら「死んだ血のにおいしかしない」から。

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