第８次少女大戦記

第4章 神永未羅の場合 第34節 よいこは絶対マネしないでね

それから数日、私は粘（ねん）土（ど）遊びに熱中した。

粘土はザ・クラッシュに、探してもらった。

粘土が採れる場所は、コンクリ構造物から、ちょっと離（はな）れてたので、「重かったよ、マッタク」と、ザ・クラッシュにイヤ味を言われちゃった。

私が作ったのは女（にょ）体（たい）だ。

ただし、イヤらしいのでも、美しいのでもない。

バストとヒップだけグロテスクに強調した女体。

「女」と言う字を、足で踏（ふ）みつぶしたような泥（どろ）人（にん）形（ぎょう）だ。

ただし、形はグロでも、服装とメイクには気をつかった。

竹ベラと串（くし）の先で、ていねいに模様をつけて行った。

ここだけは絶対、手（て）抜（ぬ）き出来ないのよね。

「私が土（ど）偶（ぐう）なら、こんな服を着たい。メイクしたい」と言う祈（いの）りと願いを込（こ）めて、モクモクと手を動かした。

肌（はだ）が露（ろ）出（しゅつ）している部分には黥（いれずみ）も入れた。

そういうのを30体くらい作った。

本当は1体で十分なんだけど、まあ、29体は失敗作になると踏（ふ）んでのことなの。

造（ぞう）形（けい）した泥人形の自然乾（かん）燥（そう）には、一週間ほどしか、かけなかった。

次は燃料が必要だった。

コンクリ構造物の中にある燃料は古新聞ぐらい。ガソリン、ガスボンベは危険すぎて使えない。

私はザ・クラッシュに「枯（か）れ葉と枯れ枝を、出来るだけ集めてちょうだい」と、おねだりした。またイヤな顔されたけど、ちゃんと、やってくれたよ。

お次は泥人形の焼（しょう）成（せい）炉（ろ）が必要だった。

コンクリ構造物の回りは石ころゴロゴロだったから、これは簡単だった。

空気の通り道が出来るよう、ちゃんと、すき間を作りつつ、石をリング状に積み上げた。

ザ・クラッシュ一人に任せず、全員でやった。もちろん、屋外で。

「ゾンビはどうしたのか」って？

もちろん、ザ・クラッシュが蹴（け）散（ち）らしてくれたよ～。

準備が整ったので、泥人形を野焼きした。

4時間ぐらいかけて、ゆっくり焼いた。

そのまま3日間、自然冷（れい）却（きゃく）した。

事（じ）前（ぜん）乾（かん）燥（そう）が足りないから、泥人形は全部、割れてた。

これは想定内なの。

モンダイは割れ方よ。

ここから先は秘密になるから言えないけど、私が教えられた通りに割れてる泥人形が1体だけあった。

これで良し。

儀（ぎ）式（しき）は夜明け前の、まだ暗いうちに始めた。

私とザ・クラッシュとで、屋外の複数の場所に泥人形の破片の大部分を埋（う）め、一部は持ち帰った。

その場所や儀式の内容については言えない。

最後に、泥人形を埋めた上から、ザ・クラッシュの分（ぶん）泌（ぴつ）物（ぶつ）をかけた。

最初にお願いした時、ザ・クラッシュは「私だって女の子だよ。いやだよ。そんなキタナいこと、したくないよ」と全身で抵（てい）抗（こう）した。

もっともな言い分だと思うけど、そのキタナいのが重要なのよ。

ザ・クラッシュを説得するのに一週間かかった。