第4章 神永未羅の場合 第35節 聖地に平和を

変化は、あった。

しきの後、3日ぐらいでゾンビの数がみょうに減ったの。

1週間後には逆に、これまで見たことないほど、ワンサカ増えた。


「どうして、こいつらを呼び寄せたんだよ。みずみに行くのが、メンドくさくてしょうがないじゃない」と、ザ・クラッシュから、また文句を言われた。


もう一つ、小さな変化があったのを、私はのがさなかった。

どろにんぎょうめたつかから、草の芽が出てる。

まだ分からないけど、イネ科かマメ科の植物だったら、私の勝ちだ。


さらに一週間後、ゾンビたちは複数の「にんぎょうづか」を取り囲んで、その場に座りんでしまい、コンクリ構造物の方には寄り付かなくった。

ゾンビの群生が複数出来たような物よ。


私は、みんなの前で言った。

私「みんな、聞いて。これでゾンビ軍団は、もう私たちを追っかけて来ないよ。」

未羅みら「あのゾンビたち、これから生きるの?死ぬの?」

未羅みらえんりょちに聞いて来た。

ここ最近、私がリーダーシップを取って来たから、なんかものりない。

今一つナットク出来ないんだろうな。かのじょの顔に、そう書いてある。


私「どろのヴィーナスがめぐんでくれた草の実を食べ、草のしるを吸って、ゾンビたちは命をつなぐ。草の根で、つながって、ゾンビは一体になる。死んだゾンビは草の肥やしになる。そうやってじゅんかんして、ゾンビ菌は、ここで生きて行く。こっちから手出ししない限り、もう悪いことはしないよ。」


ザ・クラッシュがニヤニヤしながら言った。

ザ・クラッシュ「武子たけこがナニしたか、私はタネもけも知ってるけど、どうして、こんな縄文時代のおまじないみたいな、やり方がゾンビ軍団に通じたの?ここは仮にもドラキュラのテリトリーじゃない。ドラキュラは近代合理主義の副産物じゃなかったのかい?」

私「ゾンビ菌には自分の頭で考える能力が無いからね。『かく言うオレはトランシルヴァニアのはくしゃく、ドラキュラだぞ』と言うアイデンティティが、ちゃんと備わってる相手には、さすがに、この手は通じなかったと思うよ。」

未羅みら「ゾンビ菌に勝ちも負けもしなかった。これが武子たけこの勝ち方なの?」

私「いやあね。Win-Winの関係と言ってよ。」


ザ・クラッシュが目だけで笑った。

ザ・クラッシュ「これで私、やっとゾンビせいそうにんの仕事からかいほうされたね。」


ニーナは、久しぶりにホッとした表情を見せた。

ニーナ「ここは文字通りのゾンビ山になったのね。」


今度は顔全体で、ザ・クラッシュが笑った。

ザ・クラッシュ「ああ。ただし平和なゾンビ山だよ。このぐんせつみたいなコンクリ構造物も、もう必要ないってことなんだろ?未羅みら。」

ザ・クラッシュ、かおるがいなくなってから、どんどんオトコっぽくなって行くなあ。

そして未羅みら司令官どのは、私たち全員に見えるように、大きく、うなずいた。


コンクリ構造物にじょうして、私たちはゾンビ山を立ち去った。

かんパンとおを、今日食べる分だけ、かんから取り出して持って行くことにした。

かんづめは空き缶がゴミになる。ポイ捨てするワケにもいかないから、長期のけいたいしょくもつとしては、余りよろしくないのよ。


未羅みらはコンクリ構造物の中にあった機材を、一つだけ持ち出した。

「これから先、これは、どうしても必要になる」と言って。

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