第42話

ピコン(では始めます。)

ソフィアはそう言うと詠唱を始める。

ピコン(創造と記憶の神の名において女神ソフィアに力を分け与え、白猫 楓の力になりたまえ)

言い終わると同時に楓は光に包まれ、記憶の中に吸い込まれる。

「夜闇、お前は俺達の子供だ。

強くなれ」そう言ったのは謎の黒いフードを被った男。

この人は楓のお父さん。

「わかりました。お父様」と答えたのは幼い頃の夜闇。

「お前には期待してるぞ」と言うお父さん。

(あぁ…そうだ。これは私が始めて生まれたときに見た光景だ。)と思う楓。

「お父様の期待に応えなきゃ」と言う夜闇。

「そのためには世界を私のものにしなきゃ」と考える夜闇。

(違う…そんなことしたら夜闇が悪者になっちゃう)と思う楓。

(…?悪者に?もうなってるんじゃ…)と考える楓。

「そのためには強くならなきゃ」と言う夜闇。

「夜闇。お父様となに話してたんだ?」と言ったのは夜神だった。

「お兄ちゃん。期待してるって」と言う夜闇。

「そうか…お兄ちゃんも応援してるぞ!」と言う夜神。

「お兄ちゃん、強くなりたいの。強くしてほしい」と頼む夜闇。

「わかった」と答える夜神にはまだ光があった。

「お兄ちゃん、この世界を私たちのものにしようよ」と言う夜闇。

「え?この世界を?」と答える夜神。

「そう!それでお父様に褒めてもらおうよ!」と言う夜闇。

「それはいいな」と答える夜神。

(そうだ。ここからおかしくなったんだ。)

「そのためには2人で強くならなきゃね!」と言う夜闇。

「そうだな!あとは仲間も集めなきゃな」と言う夜神。

「お父様に喜んでもらお!」と言う夜闇。

それからはお父様のために夜闇は頑張った。

夜神は妹との約束のために頑張った。

2人とも強くなった。

だけど、仲間だけは集まらなかった。

(そうだ…だから2人だけで頑張ったんだっけ…)

「まずは近くの村に襲撃に行って村人殺そう」と言う夜闇。

「いいぞ!」と言う夜神。

そして…半日のうちにその村は廃村になった。

「流石俺の子だ。」と褒めてくれるお父さん。

(だめだ…このままじゃ世界が終わって…お母さんが悲しむ…)と楓は思う。

(…?お母さんが悲しむ…?なんで?)と思っているとお母さんとの会話が思い出される。

「お母様、私は村を一つ廃村にしました。

そしてお父様が褒めてくれた!お母様も褒めてくれる?」と夜闇は聞いた。

だけどお母さんは「これ以上はだめよ。人間も大事なの」と言った。

褒めてくれるわけでもなく、悲しそうに言ったのが印象的に残った。

(そうだ…夜闇はお父さんに褒めてもらうために…私はお母さんに褒めてもらうために動いたんだ。

…お母さんは平和を望んだから。)そして楓はそれを思い出し、ソフィアのいるところに戻ってきた。

ピコン(どう?思い出せた?)と言うソフィア。

その声は記憶で聞いたお母さんの声と全く同じだった。

「…一ついいですか?」と聞く楓にソフィアはピコン(どうしたの?)と聞く。

「お母さんですか…?」と言う楓。

ピコン(流石にバレるわよね)と言うソフィア。

ピコン(そうよ。私はお母さんよ。貴方のことをずーっと見てたの。貴方は頑張ったわね。夜闇と夜神をお父さんの呪縛から解放してあげて。あの2人はお父さんに喜んでもらおうとしただけなの。お願い楓。)と言うお母さんは泣いていた。

(大好きなお母さんが泣いてる…だったら答えは一つだよね。)と楓は思い、その返事を言う。

「お母さん、私は夜闇たちを助けるよ」と言う楓。

ピコン(ありがと…楓。優しい子に育ってくれて嬉しいわ。)と言うお母さん。

ピコン(そろそろ時間よ…行きなさい?私はずーっと見守ってるわ)と言うお母さん。

「大好きだよ。お母さん」と言う楓。

そして、楓の意識は途切れた。

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