第15話

「あの、万引きされたのはいつ頃ですか?」と聞く楓。

(なんか…探偵とか警察みたい。)と思う。

「えーと…20分前くらいですね。」と言う30前半くらいの男。

(20分前…まだ近くにいるかも知れない。監視カメラとかあるわけないよね。)と楓は思った。

だが、楓には探せる手段があった。

「能力発動 過去と未来の投影」


この能力は過去のこと、そしてそこに映し出された人の未来が見えるという力。

これも零の能力の応用だ。

そして映し出されたのは10歳くらいの女の子だった。

(この子が万引きしたのか…なるほど)と思いながら未来の映像を投影する。

するとそこには辺り一帯火事になり、一瞬で建物などが壊されていく映像に変わる。

(なんだ…この映像は…)と思いながらもう少し見てみることとする。

ファイヤーライトドラゴンと呼ばれるドラゴンが、街を破壊しているらしい。

そして…先程の10歳くらいの女の子がファイヤーライトドラゴンに狙われている。

必死で逃げてはいるが段々と距離が縮んでいく。

この映像は明後日の夕方4時頃の映像みたいだ。

(なるほど…なら…明後日まで滞在するか…こうなる前に…早く先手を打たなければ…)と思った。

「私は明後日までいることにします」とその場にいた全員に聞こえるように言った。


その後、零と怨繆と合流し先ほど能力で見た内容を共有した。

「ファイヤーライトドラゴンは私と零で倒す」と言うと雫と怨繆がどうして?といった表情をつくった。

「雫と怨繆には街の人達の安全確保、それからあの女の子を探してほしい」と言うとなるほどと納得してくれたようで頷いてくれた。

「えーと…俺はどうすれば?」と言う零に私は「後方援護をお願いしたい」と言う。

私のお願いが珍しかったのか、それとも私一人じゃ倒せない強敵と思ったのか驚いた表情をしている零。

(倒せないわけじゃないけど…いろいろな力を使っておきたい…ラスボスまでにいろいろな能力を覚えときたいから。)と思う楓。


もう一度だけ…能力を発動させる。

「能力発動 過去と未来の投影」


場所とどっち方面から来るのかの確認をしたかったのだ。

すると…フリル街じゃないことがわかる。

(どこだ…これは…)と思い、場所検索の能力を怨繆に使ってもらう。

「能力発動 魔法 この場所はどこ?」


(ネーミングセンスなしかよ)と思った楓。

だが…これで場所は特定できた。

どうやらこれから行こうとしていた街クルン街のようだ。

ということは明日の朝1に出発するとして…

着くのは明日の昼過ぎになりそうだ。

(地上を進むから遅いのか…)と楓は思い、空を飛ぶ方法を探す。

(羽をつけて飛ぶのはどうだろう…?いや…クルン街の人達が魔族に優しいかわからない。やめておこう。)

そうなると魔法で空間転移をするかと一人で考えていると「あの…楓。行き方なのですが…私の空間転移+透明化でクルン街の近くまで行くのはどうでしょうか?」と言う怨繆。

(確かに…それなら転移した先に誰か居ても大丈夫だな。だが…もし、透明化していても見える人が目の前にいたら…?)と考える楓。

その確率は低いと思いなおし楓はその方法で行くことを決定するのだった。


そしてその話をしている間に午後3時が来ていた。

明日のために少し準備をしていくことにする。

(必要なのは水、食料、怨繆の武器ってところか)と思いまず行ったのは武器屋だ。


ついたのは40後半の男がいる武器屋だった。

流石…武器屋の店主ガタイがいい…。

「店主はいるか?」と零が聞くとすぐ目の前から「なんだ?」と聞こえてくる。

「武器を買いたい」と言う零。

「どんな武器を希望なんだい?」と聞く40後半の男。

「女性でも使いやすい杖」と言う零。

(ほう…杖にするのか)と私が思っていると零が私の方に寄ってきた。

「予算どのくらいがいいですか?」と聞いてくる。

「金貨10枚くらい」と言うと零は店主に予算金額を言いに行く。

そして店主が奥から取ってきた杖は…

木材と金属を混ぜたような材質。

杖の持ち手のすぐ下あたりに青色の宝石がついている。

色は赤、茶色、黒、グレーがあるみたいだ。

(怨繆にはちょうどいいかもしれない)と思う。

怨繆は手にとって見てみる。

「この宝石は魔道具…ですか?」と聞く怨繆。

(魔道具?なんだそれは?)と思う楓にピコンと音がした。ソフィアが話す前に鳴る音だ。

(魔道具とは、魔法が扱えないものは魔法を扱えるようになる物。

魔法が使えるものには援助として役立つもの。

魔道具は希少で滅多に売られないものです。)

とソフィアが教えてくれる。

(希少な魔道具がどうしてここに…?)と思う楓。

「そうです。ちょうど市場で魔道具が売られていて…それを杖にはめ込んだ感じです。」と店主。

(市場もあるのか…今度行ってみるか)と楓は思った。

「なるほど…この魔道具はすごく珍しい…魔道具自体珍しいのに…」と言う怨繆。

怨繆はこれを買い取らせてくださいと言い私にお金を出すようにこっちを見てきた。

(はいはい…少し待ってくれ…)と私が思いながらお金を払う。


次に向かったのは食料などを売っている出店だ。

そこで、お米とお肉を買った。

お肉は私が作ったポケット型収納(冷蔵)に入れておくことにする。

そして水も買い、宿を探す。

昨日泊まったところと同じところの宿に行き一泊する。


次の日の朝3時。

私達はフリル街を出た。

そして、山に入る。

そこで怨繆が能力を使う。

「能力発動 空間転移 クルン街付近の草原」

「能力発動 零、雫、楓、怨繆を透明化」


と能力を発動させる。

その瞬間足元に二重の魔法陣が出てきた。

星の形をしていて紫色に光る魔法陣。

そして、怨繆はその魔法陣に杖を軽くついた。

するとさっきよりも明るく光る魔法陣に私は目を瞑る。

そして…光が弱くなった感じがして目を開く。

そこにはさっきまであった木はなく、ただ草原が広がっているだけだった。

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