第3話 ゴー・トゥー・ザ・ケージ!
「お前。旦那に感謝しろよ? あんなに面倒見の良い人は公国広しど、そうはいないんだぜ」
…はい。
ほんそれだよ…しかと、心に響いたぜ…っ!
記念すべき(か?)異世界二日目の朝ですよ。
もうね? こうなったらテンポ上げてかなきゃしゃーないでしょ?
昨日の半日で俺のハートは大分すり減っちまったよ…oгz。
まぁね。俺ってばホラ、ちょっと読みかじってたラノベ(勿論、主人公最強系)の影響でさ?
特に俺TUEEEE!よりも生産系チート無双とかの方が好きなわけよ。
ほら! DQ漫画作品の大冒険のDIEよりもPOPの方が好きっていうかさ?
……いや、余計分かり辛かったな、この下りは忘れてくれ。
で。お気楽にポーションとか楽勝で作って売って稼いで異世界を平和的にエンジョイしたかったのよ。
けど、ゲームの初期設定みたいにすんなりスタートできる訳もないわけで。
いわゆるポーションを主に作って生計を立てる人をポーションクラフターとか無駄にカッコイイ呼び方されてる業種みたいで錬金術師界隈の言わば花形職。
ンな厳しい業界じゃあしがらみも多いらしい。
第一の壁、そもそも錬金術師というカテゴリーは資格制度だった件。
…おいおい。あの有名な
冗談はミス・ヨシコだ。
俺は無免許でもいけるもんかとそう緩く考えてたが、確かにポーションは元の世界で言うとこの医薬品に近しいものとも考えられるだろう。
この異世界の錬金術って学問は魔術と同じく、もしくは別物、または派生や混合して存在し広く知られているものらしい。
たーだ、専攻したり扱う代物如何によっては学者寄りだったり職人寄りだったりするのはままあるようだな。
え? 俺? 勿論、無免許だよ。
そもそも自動車免許すら持ってない最近の若者代表ですよ?
車持ってるから偉いって誰が決めたんだ?
……いや、多分俺よりは偉いよな。うん。
第二の壁、販売ルートとか派閥とかその他色々な件(※面倒になった)。
それと、ポーションを売るにも場所が必要だ。
店を借りるなりして販売目的だけじゃなくポーションを作る工房だって要る。
先に言ったが、ポーションはそれなりに
つまり、俺がポーションクラフターとして輝かしくデビューすると――漏れなくそいつらから
だがしかーし! そんな二枚の分厚い壁を解決できる方法がありまーす。
そいつらのどっかに門弟として入り込めば万事解決ってスンポーよお…!(邪悪)
てえ訳で昨日は意気揚々とポーキーの旦那から投げつけられた住所と地図を頼りに街中の工房を訪ねて人生初の
「弟子入り? どなたか名のある錬金術師殿の紹介で?」
「持参金は如何ほどかな…?(チラッチラッ)」
「……せめて、我が工房に利益となり得る錬金の秘具などは持っておらなんだか」
まあ、およそこの三択だな。
無言でドアを閉められたのが三割越え、衛兵も2回呼ばれたよぉ!?(※鼻声)
紹介状? ねーよ!
そもそもこの今日到着した異世界に縁もゆかりもあるわけねーだろがい!?
持参金? 弟子入りに金寄越せとかマジ?
ハッハッハ! びた一文持ってません! 残念でした!!
錬金の秘具? んなも…おおっと! 危ないとこだった、それならあるぜぇ~?
俺は自信満々に笑顔で神(から貰った)アイテムを見せびらかしてやったんだ。
けど、無言で神アイテムを放り投げられ、俺まで無言で放り投げやがった。
この節穴共め! お前らこそモグリなんじゃねーの!
今度機会があったら、お前らの世界の神様に言いつけてやっからなあ!
クソッタレがあああああああーー!!(※某王子の人風に)
でね? ベソかいてギルドに帰ってきた訳ですよ?
…ああ! 確かにポーキーの旦那には感謝の言葉しかないよ。
晩飯と一晩の宿まで奢って貰って、その上朝食まで…顔は豚だけどメッチャ良い人っ!!
「…うるせえなあ。余計な事言ってんじゃあねえよ。隣の
レストランの会計を済ませてくれたポーキーに連れられて俺は街中を中心部へと進む。
確か、防犯やら何やらの関係で利用できる要塞の出入り口は昨日通ったとこだけという話だから…俺をこの要塞から追放する気はないみたいだな?
「ここから出ていけというのは簡単だが…最寄りの要塞まで少なくとも4日は掛かるだろう」
えぇ~野垂れ死に決定じゃないですかあ~…もしかして詰んでる?
「これから、お前を連れてく
いや? 何も知らんて。
そこんとこかなり重要よ?
――王弟戦争とは?
聞けば、この公国とやら元はもっと大国で隣り合う帝国とやらも同じ国だったらしい。
だがしかし、今から五十年ほど前に次代の王候補であった兄弟が
…兄弟で揉めて戦争とかどっちも王様に向いてなかったんじゃね?
傲慢不遜で悪名高かった兄の名が、ガウェイン。
優秀で稀代の魔術師としても語られる弟の名は、アペル。
大方、国民が推したのが出来の良い弟だったもんで馬鹿兄貴が焦ったんだろうよ。
戦争はたったの2年足らずでアペル側のド圧勝。
後の賢君大公アペルはアペル公国として独立。
完膚なきまでに負けて不貞腐れた兄貴のガウェインは、残った領土をガウェイン帝国と改めたという話だそうだ。
「戦争自体は終わっても暫くはアチコチで
どうやら現在は違うが、元はこの要塞が大公様の在所だったみたいだな。
「が、放置すれば喰うに困った連中が賊になったりして害が出るだろ? アペル様ってのは凄い方でな。その連中を
全部!? そりゃ凄い話だが――…ん? 何で急に脚を止めたんだ。
…
確か、王城とか貴族生活圏とか軍事施設とかと市民の生活圏を区切ってたみたいなのラノベで読んだ記憶あるし。
けど…何だこの違和感? 外の城壁よりも
それに、門衛とは比べ物にならない重装備の兵士達が常に多人数で壁近くを巡回と警備をしてるみたいだ。
表情もやけに厳しい。
街中で見たのとはベクトルが違う…何て言うか、
「ありきたりな要塞ならこの先はやんごとなき貴人や王族の在所なんだろうが、此処では違う。――要塞の
……おり? 檻って動物園とかにあるアレ、か?
「言ったろう? かの賢君大公は集まってきた者全てを受け入れた。種族と出自、前科すらも問わず。公国の民の安全の為に、な。その
ポーキーが合図すると目の前の超合金っぽい鉄扉の幾重にも設置された閂が外されていく。
…何かヤヴァイことになってきてやしないか?
もしかしなくとも俺はこのアンダーグラウンド的な場所に収容されてしまうのでは?
「安心しろ。お前を囚人にしたいわけじゃないんだ。決して出れない場所じゃないし、思ったよりも
俺がその言葉に何か訊き返そうと考えている間に扉の奥に立っていた人影らしきものが動きだしたので目がいってしまった。
「紹介するぞ、チビ助。これからお前の世話をしてくれる檻の薬師で、ハイエナ族のパラスだ」
「パラスなのだ」
…………。
おいおいおい。マジかよ…?
そこには頭の上にフサフサの毛で覆われた獣の耳。
全身をフワっとした不思議なまだらと縞模様の毛皮で覆われ。
大きな金色の瞳にちゃんとマズルが残る人間とケモが混然とした美少女顔、いや美獣顔!
ガチチケモナーが大歓喜の獣人娘がそこに居た。
「…あン? おい、そこのオスガキ。返事くらいするのだ」
……後、ちょっと
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