动荡泰朝道侠伝~魔法が迫害される中華風異世界に魔法使いとして転生しました
ユキミヤリンドウ/夏風ユキト
第1話 開盤
「君は魔法使いになりたいのかね?」
目の前のおじいさんがあたしにそう言った。
◆
台湾は何度か来たことがある。旅行していて、いつもとても不思議だった。
道路わきの高い団地のような建物の上の部屋。道路の横に立ち並ぶ5階建てくらいのビル。
雨とかで汚れたあそこには誰かが住んでいるんだろうか。
それとも空室なんだろうか。
ガイドブックに載っていた小籠包のお店で美味しい夕飯を済ませて、夜風に当たりながら台北駅に近いホテルに帰る途中。
林森北路の路地を抜けた時、小さな雑居ビルのドアが開いていた。
周りには人通りは無くて、少し向こうの大きな道からはバイクのエンジン音がまばらに聞こえてくる。
ほんのりと明るい街灯が薄暗い路地を照らしていて、開いたドアから漏れる白い光がでこぼこの歩道に線を作っていた。
ビールを飲んでちょっと気が大きくなっていたのかもしれない。悪いと思いつつも、周りに誰もいないのを確かめて中に入って、細くて狭い階段を上がった一番上の部屋。
ここも少し開いたままの小さなドアの向こうに、今あたしはいる。
「名前はなんだね?日本の客人」
「……
がらんとした部屋には丸い机があって壁際には小さな棚があるだけ。
壁一面に様々な文様や八卦模様が描かれたタペストリーのようなものがかかっていた。
天井には裸電球が釣り下がっていて、部屋は薄暗い。
窓から街の明かりが差し込んできている。
机の前にいるのはお爺さんだ。
ゲームの中に出てくるような、というと安直だけど。香港映画とかに出てきそうな、赤っぽい中華服。
文様のような幾何学模様の刺繍がされていて、黒っぽくて丸い帽子をかぶっている。
長目のあご髭と眉。なんか仙人ってかんじだ。
ただ、背筋はしゃんと伸びていて、なんかカンフーの達人っぽさがある。
「それで……君はそういうものに興味があるのかね?」
「そりゃあ興味ありますよ。ない人なんていますか?」
ゲーム、漫画、アニメ、小説、映画。魔法とかそれに類する表現は山ほどある。自分がつかえれば、と思ったことがない人なんていないと思う
「魔法なんてね、お嬢さん。もっていても邪魔になるだけさ」
淡々とした口調でお爺さんが言う
「そうですか?」
魔法使いになりたい、というのは誰もが一度は考えることだと思うけど。
「もっていても意味がないさ。私が証人だ」
「なんでです?」
ちょっとくぼんだ眼と伸ばした眉の向こうの目があたしを見た。
「私は魔法使いだからさ」
◆ 祁 祁 祁 ◆
「私は魔法使いだが……この年になるまでその恩恵は感じなかったよ」
真剣な顔で言われたけど。正直言って、どう答えていいものかわからなかった。
「信じていないね?」
「あー、まあ、それは」
私は魔法使いだ。と言われてはいそうですか、と答える人はあまりいないだろうと思う。
酒でも飲んでいるのか、と思ったけど、さっきからの話し方は全然そんな感じはない。受け答えはしっかりしている。
というか、日本語を完璧に使いこなしている。
台湾の年配の方には日本語を話す人がいる、というのはガイドブックやネットでよく見る情報だけど、話し方だけ聞いているなら日本人だと思うだろう。イントネーションにもおかしなところは無い。
「証拠を見せようか?」
反応に困っているとお爺さんが真剣な顔を崩さないままに言い募った。
出来るんなら、なんていうと失礼かと思ってちょっと考えてしまうけど。その沈黙を肯定と請けとったのか、お爺さんが机の上の短冊のような紙を取り上げた
もったいぶったように、紙を顔の前でぴたりと止める。
なんとなく緊張感のある空気になってあたしも息をひそめた。
「
お爺さんがそういうと。紙が溶けるように消えて同時に赤い光が目の前で弾けた
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