第18話 超合体!

 ズゴゴゴゴゴゴゴ……!


「うぎゃー! 城が……城が壊れ始めたー!!」


 また騒ぎ始めた国王だったが、これは当然のことだったと言える。


 城が急に傾き始めたのだ。


 いや、変形したのだ!


「うわー!」


「助けてー!!」


 城内はパニックだ。


 城が浮き上がり、そこの部分から足が生える。両脇が崩れたかと思うと、腕へと変わった。


 なんと、この城そのものが合体ロボだったのだ。


 城内にいた三千人は変形する城に飲み込まれた。だが、不思議な泡に包まれたかと思うとどこかへと移動し、そこにはその他の城内の職員たちがいた。全員が集まったところで船のようなものになって城から離脱し、少し離れたところで穏やかに着地した。


「皆さん、ご無事ですか?」


「いったい何があったんだ?」


「うぎゃー! 怖いよー!」


「国王、落ち着いてください!」


「姫様は? イェシカ王女殿下はどこへ?」


「見当たりません!」


「は、あそこに!」


 人型に変形した城は五十メートルを超える大きさだ。


 そのてっぺん、頭部の上に小さくてはっきりと認識できないが女性の服装の人影が見えた。そしてそれは間違いなくイェシカの影を映し出していた。


「とう!」


 なんとイェシカは躊躇うことなくそこから飛び降りた。


 だが、空中でほどなく稲妻のような光に包まれ落下速度は穏やかになった。


 その光はヴァルムロディたちの乗る合体ロボにも繋がり、城ロボの方へ引き寄せた。


「こ、これは!」


「うおおおおおおおおおお! 新たな力がやってくるぞ!」



「「「合体だ!!」」」



 合体ロボは城に飲み込まれ、その城は一段と大きさを増して人型となって聳え立った。


『YES! 合体勇者ヴァルムヴィーサMAX!』


 魔法少女を思わせる決めポーズをとった。


 うぃーん。


 そんな機械音とともにイェシカの座った座席がヴァルムロディたちのコクピットにスライドしてくる。同時にマクシミリアンの座席が少し横に動き、その隣にイェシカが並ぶ。ヴァルムロディ、マクシミリアン、イェシカが逆三角形の配置になった。


「イェシカ! これは君がやったというのか」


「お兄様、私も一緒に戦わせてくださいませ!」


 その声は兄がこれまでに聞いたことがない、高揚感に満ち溢れたものだった。


「ああ、一緒に戦おう、イェシカ!」


 どばどばどばー!


 その時、皿やら黄金の像やら何やらが大量にコクピットになだれ込んできた。


「な、なんなんだこれは?」


「お城の生活用品や調度品ですわ。人の安全は確保しましたが、ものについては多すぎて全部を整理することはできませんでしたの」


「そ、そうなのか」


 まあ、合体ロボが操縦できるならあとは何とかなるだろう。


「ロディ、どうした?」


 並んだ兄妹の下にいるヴァルムロディはさっきから沈黙したままだ。座席が影になって様子がよく見えない。


「いや、何でもない」


 そう答えた彼の前には、一枚の布切れがあった。城の調度品とともになだれ込んできたもののひとつだ。


 それは女性用のパンツだった。


「アルベルティーナ」と記名されている。兄妹の母親の名だ。


 かつて魔法学校の友人であるカールはこう言った。



「美人のパンツは勝利のお守りなんだぜ!」



 ヴァルムロディはそれを見つからないようにさっと握ると、素早くジャケットの内ポケットにしまった。


「まさか、調度品のせいで操縦ができなくなったのか?」


 返事はない。


 ヴァルムロディは瞑目した後にすうっと息を吸い込んで、刮目した。


「うおおおおおおおおおおおおお!!!」



「な、な、な、な、な、な、なんだとぉー!!!?」


 スカークはコロニーゴーレムより一回り大きくなってしまった合体ロボに愕然とした。


「な、なんてこったぁ。このギリギリの局面において、まだ奥の手があったなんてぇ!!」


 その声は悲鳴に近いものがあった。


「うぎぎぎぎー! だぁが、でかくなったことで狙いやすくなったんだぜぇ! くらえ、くらえ、くらえ! 合体炎!!!!」


 コロニーゴーレムから破壊的な炎が連発される。


 だが、いずれの攻撃も巨大ロボの手前で消えた。


「ぐええええぇ? なんでぇ?」



「≪パーフェクト完全防御≫!!」



 なんと、≪完全防御≫の異次元へつながる渦が合体ロボを覆うように包み込んでいるではないか。


 これまでは攻撃のたびに渦をその位置に合わせて発生させていた。だが、今はその渦を巨大化させしかも常駐させているのだ。


「私は城からも≪完全防御≫のための力を得ることができた。これならいかなる攻撃も通じないということになる! まさに、完全なる≪完全防御≫だ!」


 形容詞が重複していることはこの際気にしないでおこう。


「ぎええええ! そんなのありかよ!」


 スカークは完全に手詰まりになった。

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