第17話 コロニーゴーレム
「くらえ! 合体炎!!」
すべてのドラゴンが炎を吐き、収斂して超高速で迫る。
「≪完全防御≫!!」
ギリギリの反応でなんとか防ぐ。
だが、あまりに速い。これまでの経験にない速度だ。
何度も防ぎきれるだろうか。
「は!?」
このゴーレムは合体ロボの二倍以上の大きさだ。下を見ている間に上が攻撃してきたら視界に入らない。
すでに次の合体炎が襲ってきていた。
反応したときにはすでに遅いと思った。
しかし、合体ロボは華麗に躱した。ヴァルムロディのおかげだ。
だが、後方のビームが通り過ぎた跡を見てぞっとした。森が蒸発し、大きく抉れて道ができていた。もし躱せてなかったらこのロボはどうなっていたことか。
「どうすればいい?」
動揺のあまり、判断ができなくなってしまっていた。
「こういうときは死角に入ればいいさ。敵のでかさが仇になる!」
ゴーレムの股の下をくぐって背後を取る。
「『ウトゥデンデ・ビーム』!!!」
即座に右足をビームで消滅させる。
「これだけでかいのがぶっ倒れれば粉々に砕けてしまうだろう。そして、これを再生するためにゴーレム使いの精神力が削られるはずだ」
「ロディ、君は天才だな!」
だが、その意図通りにはならなかった。なんと、ゴーレムは倒れながら右足を再生しそのまま踏ん張ってみせたのだ。
「再生が速すぎる!」
「だったら足下に≪完全防御≫かけてやれ!」
それによって踏ん張りが利かなくなれば倒すことができる。
だが実行するより先に大きく振られたゴーレムの右腕が合体ロボを襲う。
躱したものの、その風圧だけで吹っ飛ばされる。
「く、現状で戦うには軽すぎるか。『合体』!」
ヴァルムロディは小型砲台とルンドストロム領からやってきた大型砲台を分解して合体ロボに集約した。それでも大きさは全く追いつかない。
「これならどうだ! 『グングニル』!!」
ロボが変形して一本の巨大な槍になった。そして一瞬で音速を超える速度に加速し、大質量がゴーレムを真っ二つに貫いた。
その凄まじい威力にゴーレムは大爆発した。
「やったか!」
……いや、それでも凄まじい速度で再生してゆくではないか。
「敵のゴーレム使いはどれだけの精神力を持っているというのだ……」
「合体炎! 合体炎!」
スカークもとにかく早く合体ロボを倒さねばならないと必死になっていた。
「もうチャーナレの精神力がつきてもおかしくない。いや、これまでの限界をとうに超えている。あいつは無理をしすぎている!」
こういう時、≪竜使い≫という天恵を持って生まれたことを悔いてしまう。
チャーナレは自分を犠牲にして何度も何度もゴーレムを再生させている。しかし自分の能力は他を頑張らせる能力であって自分が頑張ることに何の意味もない。
見えないところで自分のために、それこそ命を削って戦っているのだ。なのに自分はただただ指示を出すだけの存在に過ぎない。
彼女が倒れればもはや戦うことはできなくなるだけではない。
これまで忠誠を尽くしてくれた彼女までも失ってしまうことになりかねない。
早く、早く決着をつけなければならない。
コロニーゴーレムの攻撃は苛烈を極めた。
「はぁ! はぁ! ≪完全防御≫!!」
それでも合体ロボはあらゆる攻撃を防御し、あるいは躱し続けた。
だが、一瞬でも判断を誤ればドラゴンの炎に消し去られてしまうだろう。
極限の集中力を要求される時間があまりに長い。
「はぁ! はぁ! 『ウトゥデンデ・ビーム』!!」
「はぁ! はぁ! まだ再生するぞ!」
もはや呼吸をすることさえままならない。
はぁ!
はぁ!!
はぁ!!!
その息づかいは城から見守るイェシカにも伝わっていた。
「はぁ♡ はぁ♡ はぁ♡ お兄様とヴァルムロディ様は合体ロボの中で熱く、激しく戦っておられますわぁ♡」
間違ってはいないが、表情は明らかに違うものを妄想している。
「ぎゃー! またゴーレムが復活した! もうダメだ! もうダメだー!!」
国王は何かあるごとに叫び続けた。
「国王様、ご安心ください。マクシミリアン王子たちはゴーレムが決してこちらを攻撃しないように位置取りに気をつけながら戦っておられます。彼らの勝利を信じましょう」
「どう見たってロボの方が押されてるじゃないか! やられる! やられちゃうよー!」
「確かに、せめて……あのゴーレムと同じ大きさなら……」
戦況は誰の目にも明らかに合体ロボが不利だった。
(お兄様を助けたい!)
だけどどうしたらいいかわからない。
(お兄様とヴァルムロディ様が中で何をしているのか覗きたい!)
どんないちゃいちゃが繰り広げられているかと思うと、鼻血が出そうになる。
(いけないわ、こんなこと考えてちゃ。お兄様が大変なの。私に何かできることはないの?)
あの合体ロボの封印を解いたのは自分だという自負が正気に戻させる。
(でも、お兄様とヴァルムロディ様が結婚して、いんぐりもんぐりいんぐりもんぐり……ぐふふふふふ♡)
「は!」
そのときイェシカは重要なことに気づいた。
この王家は、五人の勇者のうち二人が結婚して築かれた。
「ということは、もう一人分の合体ロボの箱が隠されてるんじゃないの!?」
今のロボが夫のものか妻のものだったのかはわからない。
だけど、二人が一緒だったなら、二人分の合体ロボもあったに違いない。
ならば地下にまた行けばいいなかもしれない。
そんな時間はあるの?
どうしよう。
いいえ、妄想に実行力が加われば、絶対に未来は開かれるんだから!
「お願い! 私たちにもっと力を貸してちょうだい!」
同じ時、ヴァルムロディとマクシミリアンも同様に願っていた。
「俺にさらなる力を与えてくれ!」
「私にもっと力を!」
三人の願いが強烈な波動となって、ヴァルムロディのヘルメットを呼び覚ました。
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