第15話 あざやかな戦い
「今度はドラゴンが城下町のほうを狙い始めたようだ」
「ふ、私の戦士としての未熟さを痛感させられるよ。これまで魔物たちを追い払ってきたという自負があったのに」
「それは違うぜ、マックス。百戦錬磨の武将はすべて同じ戦い方をして勝ってきたわけじゃない。常に新しい戦場で新しい勝ち方を見つけてきたから戦果を挙げることができたんだ!」
「なるほどな。心折れることなく、最後まで勝利を求めるか! やはり君こそが勇者だよ、ロディ!」
「まずは一般人を守ることが先決だ。街を狙っているドラゴンからだ」
「あの数を同時に止められるか?」
三十頭のドラゴンを同時に倒すのは困難だと思った。
「『グレイプニール』!!」
ロボの両腕から無数のロープが飛び出し、すべてのドラゴンの首に絡みついた。
ぐいっと引っ張るとドラゴンたちは街に近づくことができなくなった。同時に炎を吐くことも困難になった。
「うおおおおおおおおおおおおお!!」
そのまま力任せに振り回し、ハンマー投げのようにドラゴンをゴーレムにぶつける。
「けあー! 俺様のドラゴンたちが! おぉのれぇ、やってくれたな!」
スカークは怒り狂った。
「す……すごい、これが伝説の鉄の人型」
「こんなすごいものが二千年も前につくられたというの?」
「文献によれば、ドワーフの中でも選りすぐりの職人がつくり上げたとされています」
「お願い、教えて。過去の五人の勇者の伝説を」
学者は王女に請われて顔がにやけたが、しばらく躊躇ってから話し始めた。
「勇者たちに関する話はいくつもあり、どれが本当なのかわからないというのが現状です。ただ言えるのは、彼らが協力して人型を操り、魔王を倒したこと」
「それはわかってる」
「そしてそのうちの二人が結婚し、この王国をつくったこと」
「え? では、この王家は勇者の血筋だということ?」
「伝説の通りであれば……この王家は千八百年にわたり続いてきた家系でございます。それ以前の歴史が残されていないためなんとも言いがたいのですが」
「でもそうなら、なぜ私たちはそんなことも知らないでいたのかしら。自分の家系で誇るべき勇者の末裔であるなら、少なくとも口伝では残されてもいいようなものなのに」
「ど、どうしてでしょうな」
その辺を学者は適当にごまかした。
「やられたら倍返しだぁ! ドラゴンたちよ、左右に散れ!」
ロープが絡まったままドラゴンたちは二手に分かれて羽ばたいた。これだけの数のドラゴンが飛べばさしもの合体ロボも宙に浮いてしまう。
「バぁラバラに引き裂いてやれ!」
ロボの躯体が軋む。
「一気にやっちまいなぁ!」
バリバリバリ!
ロボが裂けた。
その光景に絶望する国王たちの表情に、スカークは満面の笑みを浮かべた。
しかしそれが早計であったことはすぐに思い知ることになる。
合体ロボは自在に解体もできる。
わざと裂けたのだ。
一方はグレイプニールのロープを放すと同時に砲台のような形態に変形していた。
そして、引き裂こうとしたドラゴンたちの半分は同じ方向へかたまってしまっていた。
そこへ砲台から凄まじいビームが放たれる。
「『ウトゥデンデ・ビーム』!!!」
飲み込まれた七頭のドラゴンは悉く消滅した。
「うぎゃー!! ドラゴンたちが!」
スカークは怒る以上に動揺が大きかった。
だが、合体ロボのもう一方はゴーレムのパンチによって吹っ飛ばされた。
「きぇー! ぃよくやったぞぉ、チャーナレぇ!」
「大丈夫か、マックス!」
「ああ、すまない。君の鮮やかさに目を奪われて、ゴーレムの攻撃を見ていなかったよ」
「もう一度合体するぞ!」
「ああ!」
マクシミリアンは合体ロボの力を通じて≪完全防御≫をすることはできるが、合体ロボ自体を操縦することはできない。ひとまず合体する必要があった。
「だが、ドラゴンの数はまだまだ多い。どうする?」
「こうするのさ!」
一度合体してから、再びロボから無数の箱が解体して離れてゆく。そして数個が合体して五十機ばかりの小さな浮遊砲台となってドラゴンにビーム攻撃を加えてゆく。
一つひとつの攻撃はドラゴンに致命傷を与えるほどではないが、牽制するには十分だった。これによってドラゴンは城にも城下町にも近づくことができなくなった。
「同時に何機も動かせるのか」
「指示さえ出せばあとは自動でやってくれる。これでゴーレムに集中できる」
「うおおおおおお! ≪完全防御≫!」
ゴーレムの攻撃にすかさず対応する。今度はゴーレムの拳だけでなく足元にもマクシミリアンの能力が効いている。ゴーレムはすっころんで自分の重さのせいで砕け散った。
しかし、すぐに再生してしまう。
「ちくしょう、きりがないぜ!」
「けーっけっけっけ! 素晴らしいぞぉ、チャーナレ!」
スカークはその圧倒的再生力に勝利を確信した。
チャーナレの精神力はすさまじい。何度壊されようともゴーレムを復活させるだろう。
「あとは俺様のドラゴンたちだ。あの小型ビーム砲台がちょろちょろ動き回って面倒だったが、動きのパターンが読めてきたぜぇ。逆にこっちが撃墜してやるぜ」
自動砲台は指示に従って動くがゆえに、ある程度のパターンがある。
「こぉいつらはドラゴンを街へ行かせないために行く先を遮るように移動し、攻撃してくるぅ。つぅまり、逆のほうへ行ったらどうなるのかなぁ?」
ドラゴンたちは撤退するかのような動きを見せた。
それに合わせて、自動砲台はドラゴンと街の間に入るように位置取りする。
そのままドラゴンが退がると自動砲台の一部は追撃し、結果としてその隊列は一列に長く伸びた。
「けっけっけっけ! 狙い通りだぜぇ!」
次のタイミングでドラゴンたちは振り返り、一か所に集まった。
「知ってるかぁ、ドラゴンの炎を合体させると相乗効果でとんでもない威力になるんだぜぇ」
すべてのドラゴンが同じ方向へ炎を吐く。
「合体炎!!」
スカークが叫ぶと、炎は渦を巻きながら収束し、さらに猛烈に加速して自動砲台の列に直進していった。
いや、それだけではない。
その直線上にはゴーレムと戦う合体ロボがいる。
ゴーレムはこれを食らっても再生させればいい。
合体ロボは?
マクシミリアンの≪完全防御≫がある。
しかし、マクシミリアンはゴーレムとの戦いに気をとられて、ドラゴンの炎には気づいていなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます