治癒

リリアーナのお屋敷はノースディア城と呼ばれているらしい。

「このお城にはリリアーナが1人で住んでるの?」

「いいえ、お母様も一緒よ…」

そう言うと押し黙ってしまった。

「ご病気で療養中だと聞いたことがあります」

とリナはこそっと教えてくれた。環境が変わったことが原因らしい。獣人と人間のハーフは女性に獣人の特徴が現れることが多いと言われている。リリアーナ以外の王族には特徴が全く現れていないように。リリアーナが北部に来たのは、リリアーナの母親が元々北部で生まれたからだろう。獣人は本来の環境で暮らした方が体調が良くなると聞いたことがある。

…よし、まずは

「王妃様にお会いできないかな。俺は治癒魔法も使えるから、何か役に立てるかもしれないし」

「…ええ、お母様をお願い」

そう言われ、案内された部屋には獣人の綺麗な女性が横たわっていた。今までたくさんの医者が治療を施してきたらしいがどれも効果がなかったらしい。


「失礼いたします」

まずは探索魔法で病気の原因を調べる。なるほど、魔力の流れが悪いな…。途中で止まっている。これは、ここまで生きられたことが逆に凄いレベルだ。

急いで治癒魔法をかける。魔力が通常通りに流れるように、そして、魔力が塞き止められているところを取り除くイメージをする。

「よしっ」

パアッと光が出て、消えた。

どうだ?できたか?

「…ん」

目を覚ましたようだ。

「お母様!!」

「リリアーナ…」

「っ良かった…良かったですわ」

そう言ってリリアーナは泣いて抱きついている。


「貴方が助けてくれたのね」

「はい。レオンと申します」

「そう。ありがとう、レオン。私はマリアンヌよ。それにしても身体も軽いし、すぐにでも動けそうよ」

「いえ、お助けできて良かったです」

「私からもありがとう!!レオン」

「じゃあ、俺はこれで…」

「まだお礼できていないわ」

「昨日もお礼を頂きましたし、これ以上は…」

「昨日?」

「そうよ!! 私がホワイトベアに襲われたところを助けてくれたのよ!!」

「あらまあ、そうだったのね。娘を助けてくれてありがとう」

「いえいえ、そんな大したことは…」

「なら今日の分と昨日の分も含めて、たくさんお礼しないといけないわね」

「ええっ‼」

その後部屋に入ってきた侍女からマリアンヌが目が覚めたと聞いたようだ。今夜はパーティーが開かれることになった。パーティーといっても家族だけが参加する場所だし、当然俺には関係のない話だと思っていたのだが…なぜか俺も参加することになったのだ。助けてくれたお礼だと言われ、またしても促されるまま参加することになったのだ。まあ食事代が浮くのは助かるんだが。


ノースディア城の使用人たちから次から次へと感謝の言葉を伝えられた。皆余程心配していたのだろう。


俺は一旦冒険者ギルドに行って、採取した薬草を渡さなくてはいけない。リリアーナたちに伝えてから冒険者ギルドに向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る