幕間
幕間 これまでとこれから
数年前、俺は神様のミスによって死んでしまった。
死後に魂が行きつく“魂の間”とやらで謝罪してくれたのは、ミオネ=アウレリケという名前の、魂を司るという女神(とても美人)だった。
彼女の話によれば、俺の死の原因は二柱の神の喧嘩だとか。
神々の喧嘩が魂の間にいる彼女にまで影響を及ぼしてしまったらしい。
その影響で魂の管理を誤り、結果予定より早く俺が死んだのだとか。
ショックだったよ。自分が死んだと知った時は。
全身から力が抜けて、今にも崩れ落ちそうだった。
まあ、崩れ落ちる身体はなかったんだが。
ミオネさんには決して悪いところなどなかった。それでも、ほとんど原因が彼女にないにも関わらず責任があるからと俺に頭を下げた彼女の精神性は、まさに女神に相応しいものだったと俺は思っている。(喧嘩した神はくたばれ)
そして俺は、特別な能力を受け取り転生する事になった。
女神からお詫びとして好きな能力を持って転生する権利を受け取ったのだ。
強力な力だと爆散するかもしれないと言われた時はビビッた。ははっ。
最初はどういう力を貰えばいいのかが分からなかった。
欲しい力、試してみたい力自体はあっても、その力で何をするのか、どう力を使うのかというイメージが俺の中には存在していなかったから。
悩んで悩んで……答えを出した。
世界征服なんてどうだろうか、と。
前の人生も決して悪いものではなかったけれど。自由にやりたい事すべてをやれたのかと言われると、否と言わざるを得ない人生だったから。
だから次の人生では、全力で生き抜いてから派手に死にたい。
そう思った俺は、世界征服を新たな人生の目的とする事を決めた。
それからはスムーズに能力の構想を練る事が出来た。
自我自尊にはなるが。十分に世界征服できる力に仕上がったと思う。
それから女神に能力を与えられ(死ぬほど辛かった)、俺は遂に転生した。
転生した当時はメチャクチャ大変だった。
生まれ変わったと思ったらまさかまさかの赤ん坊スタート。
いや分かるよ? 生まれた直後が赤ん坊なのは当然だ。
けれど仮にも俺は一回、神様のミスによって早死にしたとはいえ、それなりの人生経験をしている訳で、それが赤ん坊からやり直しはシンプルに辛いものがあった。
知ってるか? 赤ん坊って行動の自由がほぼないんだぜ?
そもそも赤ん坊の身体には筋肉が付いていないから、動きたくてもマトモに動く事すら出来ないし、仮に動けたとしてもすぐに親にベビーベッドへ連れ戻される。
刑務所だってここまでではないだろうと思うくらいの、過酷な監視社会だ。
自分で行動を選べないってのは、こんなにもストレスだったんだな。
あと驚いたのは、名前が前世とまったく一緒だった事。
両親は似ても似つかない人達なんだけどな?
もしかしたら混乱しないよう、ミオネさんが配慮してくれたのかも。
ありがとうございますミオネさん。おかげで助かってます。
しかしそんな状況も、生まれてから一年が経つ頃には変わった。
俺の不断の努力によって全身に筋肉が付き、歩いたり走ったりする事や、両親と会話する事もできるようになったからだ。いやほんとうに頑張ったわ。
ただ、流石に会話をするのは不味いかと焦った。
子供がいた経験はないものの、ぼんやりとした知識として、生後一年の赤ん坊が流暢に会話するのはどう考えてもあり得ないよな、と知っていたから。
最悪、両親から怖がられて捨てられる可能性さえ頭に過った。
けど新しい両親は俺を怖がったりしなかった。
むしろこの子は天才だ! と大騒ぎしたくらいだ。
例え捨てられても生きていける自信はあった。
今は幼い身でも、かつて20年以上生きた経験があるから。
それに神様から貰った能力もある。
一人になっても問題なく生きる事は出来ただろう。
だがそれでも。家族に嫌われて堪えない訳じゃない。
両親が大騒ぎした時の安心感は、今も脳裏に強く刻まれている。
……溺愛されるのは勘弁して欲しいが。
さてさて。足元が固まった以上、次に考えるべきは世界征服だ。
まさにこの為に生まれ変わったと言っても過言じゃない。
俺の今世における最大最強の目的だ。決して舐めては掛かれない。
しかし世界征服は大事業だ。一から十まですべてを一人で行うなど絶対に不可能。まずなんとかして自分の勢力を築かなければ、始める事さえできない。
だから俺が最初にすべき事は――お嫁さんを見つける事だ!
同じ夢を見て、同じ価値観を共有する女の子こそが俺には必要だ!
国民、領土、主権。
これらは国家に必要な三つの条件だと言われている。
だが、そんなものは心の底からどうでもいい。
それらは能力がある限り幾らでも用意できる。
伴侶探しよりも優先すべき事だとは思えない。
どうして俺がお嫁さんを求めるのか。
簡単だ。俺が間違った時に正して貰う為だ。
歴史を見ると、上の地位にいる者ほど暴君になりやすい傾向がある。
その多くは、強大な力を振るえる事実に酔ったからこそ他者に無体を働いたのだろうが、中には高い地位に立った事で諫言を行なう者がいなくなり、結果的に暴君にならざるを得なかった者も多いのでは、と俺は考えている。
立場が下の者が上の者に諫言を行なうには、両者の間に深い信頼が必要だ。
それがなければ、普通は癇癪を恐れて何も言えなくなるからだ。
だがそれだと組織は必ず崩壊する。諫言を行なう者がいないという事は、もしトップが間違っていた時には、誰もそれを指摘しないという事だからだ。
そんな状態で組織が良い方向に進むはずもない。崩壊は時間との勝負になる。
だからこそ幼い今の内から信頼できる相手を作る必要があるのだ。
その相手には上下とは違う立ち位置に置かれるお嫁さんこそが望ましい。
そして信頼できる相手とは、例え何人いても構わない。
……なーんて言ったが。これは建前。
本音はたくさんの女の子と付き合いたい、だ!
当然だろう? 二度目の人生だ、堅苦しい生活なんてしたくない。世界征服なんてバカな事をするんだから、私生活だって全力でバカやらないと損だろう!?
俺はこの人生で、たくさんの女の子と結婚してハーレムを作る!
もちろん、ある程度の素質は測るつもりだ。
世界征服をするんだからな。
お嫁さん選びをミスって失敗なんて馬鹿らしい。
その辺は抜かりなく備えていく予定だ。
これから俺の飽くなき挑戦の日々が始まる……!
全力で二度目の人生を楽しんでやるぞー! おー!!
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