疑い

「てか、なんで僕?」

 沈黙を切るように僕は聞いた。

「なにが?」

「なんで僕と話すの?ご飯食べるの?その…海琴さん、元気で明るくていっぱい友達居そうだし」

 純粋な質問だった。人ともまともに話せない僕にどうして話しかけてくれたんだろう。もしやこれはなにかの罠にはめられているのか?

「もしかして僕を利用しようとしてる?」

「そ、そんなことするわけないじゃん!!!」

 声がでかすぎる。教室内のほとんど皆がこちらに目を向けた。

「ちょ、声でかい…」

 彼女の焦り具合と視線からみても騙してるわけではないようだ。

「わかった、わかったから、落ち着いて?椅子座って?」

 彼女はかなり不安な顔をしていた。まさかそんなに動揺するとは思っていなく、申し訳なさを感じる。

「…ごめん、疑いすぎた。今まで人に好かれたことなくて。話しかけてくる人には警戒心が…」

 話してて僕は本当に人と関わってこなかったのだと思い心が沈む。

「でも、君はそんなことない気がする。」

 下を向いていた彼女の目が僕の目を捕える。

「私の事…信じてくれるの?」

 彼女は期待を込めたような声で僕に聞いた。

「う、うん…まだ完全に、って訳じゃないけど。

 そんなに警戒しなくてもいいような…」

「七瀬大好き!!!」

 さっきよりも大きい声で言う。もはや咆哮。やっぱり教室中の人がこっちを見る。

 海琴と仲良くなってから興味を置かれる回数が増えたなぁ。

「…恥ずかしくないの???」

 人の視線に耐えられなくなり僕は下を向きながら話す。

「だって思ったことは人に言わないと!察して欲しいなんて思ってても誰もくみ取ってくれないもんだよ!」

 たしかに。と納得する。

「わかったよ。…じゃ、僕でよければ話し相手になってやるよ」

「いいの!やった、七瀬公認だからね?面倒くさくなっても私と話すこと!」

 なんだその契約は。まあいいやと思い「ん」と言い首を縦に振った。

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