真偽

「それでさ七瀬」

 やっぱり話しかけてくるのね。まあ隣の席だし覚悟はしてたけど、昼休みまで一緒にいるなんて正直びっくりだ。僕よりも可愛いお友達とご飯を食べた方が楽しいはずなのに。

「この前、なんであんなこと言ったの?」

 何の話だ、全く思い当たる節がない。

「なんのこと…?」

 神妙な面持ちの彼女に思わず聞き返す。

「教室で堂々と話す話じゃないと思うけど…

 七瀬、初めて会った時『もう死ね』って…」

 おにぎりを食べながら必死に思い出す。

「あーーーーーーーーーーー」

 思い出した、話しかけられたきっかけってもしかしてそれ?って出来事が線で繋がっていく。

「あーあれ?口癖なんだよたまに出るの。特に深い意味ほんとにないから」

 おにぎりを貪りながら彼女に説明する

「いやいや、え?口癖?死ねって口癖で言うの?やばすぎない?」

「え、ふつうじゃね?」

「あんた、やっぱりやばいやつ笑」

「じゃあそれでいいや

 まあ暴言言ってても無意識だから気にしないで」

「OK」

 おにぎりを食べ終わり、ペットボトルの水を開け大胆に飲む。

「あー、」

 その声に彼女が反応する

「なんで僕の独り言聞き取れたの?」

 純粋な質問だった。今まで誰にも聞き取られたことがなかったのに。誰にも聞こえない声量だったはずなのに。

「七瀬は本当に何も気づいていないんだね笑」

 …わけがわからない

「私さ、『死ね』って聞こえたから七瀬の方見たんじゃないんだよ、その数分前からずっと七瀬の方向いてて、いつかこっち向いてくれるんじゃないかなって思ってた。」

「え…なんのために」

「なんとなく?とにかく話してみたかったんだよ!

 ま、独り言の声も聞こえたけどね」

 そう言うと彼女は何故か少し悲しい顔をした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る