第6話
「ベーセル、今から俺が言う通りに動いてくれ」
「何か策があるのか?」
瀬上は黙って首を縦に振った。
「それで本当にできるのか?」
「できる」
「だがそれが可能だとしても三つの能力を同時に発動させるとなると難しいな」
「いや、二つだ。バリアは解除していい」
彼の言葉を聞いて彼女は“何を言っているんだ”と言わんばかりな顔を見せた。
「でもそれだと能力を使用する前に私達が持たない」
「俺がおとりをやる」
「おいちょっと待て!そんなこと、させられるわけないだろ、おいちょっ」
彼女の説得も聞かずに瀬上はバリアから飛び出して敵の注意を引くために白色の追手の方へと全力で突っ込んでいった。
「お前の相手は、俺だ!」
拳を握りしめ、一撃を追手に向けて放った。
拳はボスッ、という鈍い音を立てて氷に当たった。
もちろん氷というのは追手が発動させた能力によるものだ。
「あ、あれ?離れない・・・・」
氷に当たった拳が離れない、よく見ると氷と拳の接触面から徐々に氷が瀬上の方へと侵食を始めている。
「ちょっと待って頂いても・・・・ですよね・・・・」
瀬上に向かって先ほどバリアリを突き破ったものと同様の鋭く尖った氷が空中に形成された。
彼はそれを見て俯いた、だがなぜかその表情は絶望などのそれではなくて笑いに近いものだった。
「変換」
空中に形成されていた氷は突然、一瞬にして蒸発した。
その光景に驚きを隠せずに体全体を後退させて自分の付近に氷で捉えていた彼の手を放して光学迷彩を使用した。
「お前のそれは見破った!」
そう言ってベーセルは異能を行使して辺りの一定空間を通り抜け不可能な壁で囲った。するとそれと同時に3人の戦闘が繰り広げられていた空間が暗闇に包まれた。
展開された壁は追手を外に出さないための役割の他に光を要さないという役割がある。
そしてすぐに彼女は再び異能を行使して二つ目のの事象を起こした。
それは言葉で言うのは簡単なもので“ただ暗くなった空間に灯を灯した”ただそれだけ。
「お前、本当に最下位なのか?」
「本当だよ」
二人の目には先程まで見えなかった白色の追手の姿がはっきりと写っている。
「どうして!」
と、言葉を発した瞬間には背後に回った瀬上が追手を羽交い締めにしていた。
暴れる追手に対してベーセルは異能を使用した。
倒れかけた彼女の体を支え、瀬上は優しくその場に寝かせた。
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