第4話

「うっ、う・・・・・・・・・・・・」


床に寝たベーセルは微かに目を開いた。


「瀬上?」


「起きたか」


「ここは?」


彼女は周囲を見渡しながら言う。

コンクリートが剥き出しの壁や床、それによってその場にいる人間には冷たさが伝わって来る。


「ここは工事中の区画だ、逃げるにしても戦うにしてもここならやりやすい」


「そうだな・・・・」


「それでさっきの神隠し事件の続きを教えてくれるか?それとさっき俺たちを襲って来たやつのことも」


「どこまで話したかな」


「妹のところまで」


「ああ、そうだった」


彼女は立ち上がって窓ガラスの抜かれた廃墟ビルの窓際に手を置いて外を見た。


夏の暑い太陽の光がさして二人を照らしている。


「あそこに建物が見えるだろ」


ベーセルが指を指した方向に瀬上は目を細めて見た。


多くのビルや商業施設が立ち並ぶこの街の中でも一際目立つ白いビル。


「あれは?」


「民間の異能研究所だ、最近の研究で多くの成果をあげてるACCの建物、私は能力者による事件を担当しているPFSPが動くより先にこの件を調べていた。事件の起きた時間と地区からなんとか犯行現場を見ることができた。そこでACCの奴らが被害者たちを車に乗せるのをみた」


「さっきのやつもACCの手先のやつか?」


「多分な」


「俺が見つけた時にできてた背中の傷もあいつが?」


「いや、これは他のやつだ」


瀬上は悩ましげな表情を浮かべ、頭を抱えた。


「あああああもう、どうすればいいんだよ!さっきみたいな奴らが何人も何人もいるってことだろ?どうしたら・・・・」


「何言ってんだ?私たちには能力が・・・・そうか、お前・・・・」


彼女は思わず笑ってしまった。


「悪かったな能力が使えなくて」


彼はふてくされた表情をして例の白いビルを眺めた。


======


薄暗い研究所の中を白衣を着た男が歩いている。


室内は広く床や壁はタイルのような材質で男が歩くたびにゆっくりとした足音が響く。


「実験の結果は出たか?」


白衣の男はこの部屋の奥で作業している複数の科学者らしき人物たちに聞いて回る。


「はい、ですがあまり好ましいものではありません」


そう言って一人が結果の書かれた書類を男に渡した。


「確かに・・・・やはり数十日前に脱走した試験体を捉えるしかないか。君たちはこのまま実験を続けてくれ」


「わかりました」


指示を出し、来た方へと戻っていく男の後ろの壁には人一人が入れるほどの大きさのカプセルが無数に並んでいた。





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