第2話
「ここは・・・・」
少女が目を覚ますと天井が見えた。
起き上がって室内を見渡した。ベットと机と椅子が置かれた部屋、それ以外には本当に何もない。
ベットから起き上がると彼女は腰の下あたりに手を伸ばして何かを掴む仕草をした。だがそこには何もない。
「私の銃がない、一体どこに、それにここは」
一人言をつぶやいた直後に彼女の体を激痛が襲った。
今にも上げたい叫び声を歯を食いしばって口の中に押さえ込んだ。
痛む背中を抑えながら彼女は慎重に扉を開けた。
フローリングの冷たい床を音を立てないようにゆっくりと進む。
通路の先は開けている。
彼女は体を壁に寄せてまたしても慎重に確認を始めた。
テレビから聞こえる天気予報の音声が聞こえる、それと蛇口から水が出る音が聞こえていた。
彼女がテレビの音声の聞こえる方に人気を確認したのと同時に蛇口の音は止んだ。
彼女は身構える。
またしても腰の下あたりで銃を掴むような動作をしたが無いことをすぐに思い出し、腰を低くして拳を握りしめた状態で構えた。
通路端から人に足が姿を見せた。
すると彼女は正体のわからない相手の体を掴んで自分の正面へと引きずりそのまま後ろに押し倒してその相手の上に馬乗りになった。
「誰だお前は!私を閉じ込めて何をさせる気だ!」
「ちょっちょっちょと待ってくれ、俺はお前のことをどうにかしようなんて思ってない。ただ怪我してたから手当てしてやっただけだ」
「えっ」
彼女は先ほど痛んだ傷口を確認した。
確かに包帯が巻かれて出血も止まっていた。
彼女は急いで馬乗りしていた瀬上から降りて正座した。
「すまなかった!手当てをしてくれた相手になんてことを、はっ!怪我はないか⁈」
「あ?ああ、だから一度落ち着け、な?」
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「落ち着いたか?」
「ああ、それより先ほどは本当にすまなかった」
ソファーに座った彼女は丁寧に頭を下げた。
「もういいって、俺の方も何も言わなかったのはよくなかった」
「そうか、そう言ってもらえると先に手を出した私としては少し気が楽だ。ぜひ何か・・・・」
「ぎゅうううううううううううううう」
彼女の言葉を遮るように腹のなる音がした。
「今さっき夕食を作ってたんだが、せっかくだしお前も食うか?」
少女は頬を赤らめて無言で頷いた。
「じゃあもう少し待っててくれ」
そう言って瀬上はソファーから立ち上がってキッチンへと向かった。
彼女はよほど恥ずかしかったらしく瀬上が離れるまで顔を下に向けていた。
今二人が座っていたソファーのある同部屋の右側に設置されたキッチンから天気予報を見る彼女の姿を瀬上は観察していた。
紺色の服に回収した拳銃、服装は軍やPFSPのような組織の制服に近いがどこかにそれらしきマークや印がついているわけではない。
銃には登録に必要なシリアルナンバーがなかった。あれはおそらく裏ルートで入手したものだろうが、警戒はしておくべきか・・・・。
出来上がった料理をキッチンの台から持ち上げながら彼は考えていたがひとまず腹を空かせている彼女のところへと持って行った。
「できたぞ、とりあえず食ってそれから話そう」
「そうだな、では頂きます」
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「美味かった、久しぶりに保存食じゃなくてちゃんとし御飯を食べれたよ」
「そうなのか?それはよかった」
二人が食事を進める横でテレビは天気予報を終えて今話題になっている神隠し事件の話になっていた。
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「ご馳走様、本当にお腹が空いてたから助かった。ありがとう」
「どういたしまして、そう言えば名前を言ってなかった。俺は瀬上真也、よろしく」
「私はベーセルだ、よろしく。そういえば瀬上という名はどこかで聞いたな、えっと・・・・」
「“最下位”って聞いたんじゃないか?」
テーブルについた手で自身の顔を支えながら真也は言った。
「そうだ、“最下位”・・・・でもなぜだ、というか何が“最下位”なんだ」
そう言われた彼はテーブルに顔を突っ伏しながら答えた。
「能力値だよ」
「そ、それはすまなかった!知らなかったとはいえ何度も最下位と言ってしまって」
「いいんだよ別に、自分の能力値が低いのはわかってるからな」
ため息混じりに言いながらリモコンでテレビのチャンネルを変えていく。
「そういえば怪我の方はどうだ?まだ痛むか?」
「少し、この手当てもお前がやったのか?」
「そうだけど何だ?」
「この怪我の大きさだと死んでもおかしくなかったのに・・・・どうやったんだ?」
彼女は背中の傷を触りながら尋ねた。
「どうやって、とは言われても普通にと答えるしか」
「もしかしてお前本当は、すごく能力が使えるんじゃないのか?」
二人のいる空間が一気に静かになったが真也が持ち出したものによってそれは一瞬で消え去った。
「それならこんなクソ暑い日に補修なんて受けに行かないよ」
そう言って彼が机に並べたのは能力科高校一年生の範囲のテストプリントだった。点数は100点中8点、お世辞にもいい点とは言えないものだった。
それを見て彼女は笑いをこらえながら答えた。
「確かにこの点数は、その、すまない」
結局笑いをこらえられず笑ってしまった。
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