第2707話 勝ったぁあああああああ!!


「……普通にミスった……クソがっ……センエースエンジンは、本当に、制御するのが難しい……あまりにもピーキーすぎる……なぜ、こうも、安定性をドブ捨てられるのか、意味がわからん……」


 ジャミを殺す程度なら楽勝、

 と、慢心したがゆえの結果。


 もっと言えば、

 『慢心していても勝てる』、

 そのぐらいの差はあると信じての一手だったが、

 そのぐらいの差はなかったという悲しい結末。


 ウムルの誤算はそれだけではない。

 先ほど蹴り飛ばしたカンツが、


「このワシがぁああ 蹴り飛ばしただけで、無力化するとでもぉおおおおおお?!」


 間違いなくズタボロで、

 先ほど、致命的な一撃を受けた、

 にも拘わらず、

 カンツは、当たり前のように戦線に復帰して、

 ウムルの背後から、



「――閃拳っっっ!!!」




 内包されている膨大なオーラを、これでもかとぶち込んだ閃拳を、

 ウムルの背中に叩き込むカンツ。


「がはぁっ!!」


 想定外の火力。

 普通に驚いて吐血するウムル。


(せ、閃拳の厚みが……さらに増した……私が解説したセンエースの軌跡が、時間と共に、カンツの中で、しっかりと根を生やしはじめたか……必要な一手だったとはいえ、敵を大きくさせるというのは、イヤなものだな……)


 センエースを知る前に、

 センエースが刻まれたカンツ。


 アルテマウムル・シャドーを通しての軌跡。


 だいぶ歪んだ刻印だが、

 しかし、それでも美しく輝く。


「まだ、これからだぁ! まだまだ死なんぞぉおお! 死ぬときは、必ず道連れにしてやる! ワシの正義をナメるなよぉおおお!」


 どこまでも輝きを増し続ける覚悟の結晶。

 『正義の化身』という重荷を背負い続けた男の意地とプライド。

 バキバキに血走った目に、逆立った全身の剛毛。


 ゼノリカは震えた。

 『もし、敵だったら』と思うだけで背筋が凍る、大きな背中。


 そんなカンツの背中を見て、


 ――遅れてやってきた『魔王の中の魔王』が、




「すばらしい、すばらしいぞ、カンツ」




 心底からの賞賛を浴びせる。

 続けて、その隣にいる『勇者の中の勇者』が、


「もちろん、他の者たちも、素晴らしいのですが……最前線の盾として、誰よりも傷ついたカンツにこそ、最大限の賛辞をおくりたいですね」


 そう言いながら剣を抜く。


 二人の登場を受けて、

 まず、天下の面々が、


「「「「「勝ったぁあああああああああああああああああっ!」」」」」


 爆発のような歓喜に包まれた。


 ここにいるすべての超人たちが、

 この瞬間に、『実家のような安心感』を覚える。


 ゾメガ・オルゴレアムと、

 平熱マン。


 あまたの超人が集まるゼノリカの中でも、

 群を抜いている三人の中の二人。


「ボクが詰めるので、援護を任せていいですか、ゾメガさん」


「できるだけ中距離で闘ってもらった方がありがたい。『ミーティア』を撃つ時のリソースは、コントロールではなく、威力に割きたいのでのう」


「了解です。あと配下たちの指揮も、すべてお任せします。ボクは、アレの足止めに全力を注ぎますので」


「了解じゃ」


 方針が決まると、すぐに実行。


 平熱マンは、そのふざけた名前とは裏腹に、

 すさまじく丁寧な『飛翔する剣撃』でウムルの動きを封じる。

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