第2706話 『純粋結論(パーフェクトコスモゾーンのアンサー)』。


 遠い未来の自分に期待しながらも、

 しかし、同時に、不安も覚える。


 まるで『当たり前の人間』みたいだな、

 なんて、そんなことを思い、自嘲をはさむウムル。


(いや、超えるんだ……それ以外に、存在理由の証明方法はない……センエースを超える。『無上の悪』を執行し、センエースを殺す。そのためにも、器の強化は必須。私は、ここでの闘いを完璧に乗り越えて……必ず……『蝉原勇吾が誇る器の一つ』になってみせる……)


 決意をあらたにする。

 理想の未来は遠く険しいが、

 あきらめるわけにはいかない。

 これ以外に、選択肢はないのだから。


(センエース、貴様の可能性にタダ乗りさせてもらう。レゾナンス世界線に辿り着いた今も、世界の基盤自体は変わっていない。貴様が強くなるほどに、蝉原勇吾も強くなる。振り落とされなければ、私にも可能性は残る。この地獄のチキンレース……最後に勝つのは蝉原勇吾……私の最終進化形態だ。ゴートもソルもヨグも全て超えて、私が究極の個――『純粋結論(パーフェクトコスモゾーンのアンサー)』となる)


 心の中で、宣言していると、

 そこで、カンツが、


「急に黙り込んで、どうした……なにか、かんがえごとか……強大な敵であるワシを前にして……よくも、まあ……そんな悠長なことができるな……褒めてつかわす……」


 精一杯の虚勢。


 そんなカンツの言葉に、

 ウムルは、イラっとして、


「私の敵? ……それを自称できるほど強くはないだろ……ザコがぁ」


 ウムルは、そうつぶやいてから、

 カンツの腹を、全力で蹴り飛ばす。


 ドゴォっと、鈍い音がして、勢いよく吹っ飛んでいくカンツ。


 そんな彼を見下しながら、ウムルは、


「まさか、これが闘いだとでも思っていたのか? 食事だよ、こんなもの。私は、これから、すべてを捕食する……すべてを殺し、すべてを喰らう。そうでなければたどり着けない世界に……私は行く。貴様らは、そのための養分。私を、もっと黒く育むためのエサ。それ以上でもそれ以下でもない。気分の悪い勘違いはやめてくれ」


 ウムルは、さらに、オーラと魔力を充満させていき、


「私の敵になれるのはセンエースだけだ」


 目をギラつかせる。

 オーラが黒く輝く。


「さあ、いくぞ、カスども。ここから、私は、さらに一段階強くなる。つまり、どういうことかわかるか? 死のペースが跳ね上がるってことだよ。貴様らの大事な大事な家族とやらが、ここから、どんどん、どんどん、削られていくわけだ。けど、寂しくはないさ。すぐに、同じ場所にいける」


 そう言いながら、

 ウムルは、ジャミとの距離を詰めて、


「この中で一番強い貴様が、一瞬で死ねば、さすがに『ゼノリカの心』も折れるだろ?」


 そうつぶやきつつ、

 ジャミの中心に向かって、



「――閃拳――」



 とびきり重たい一撃を放った。

 本気で殺そうとした一手。

 けれど、その殺気に対して敏感に反応したジャミが、

 ギリギリのところで軸をずらしたため、


「げっ……ちっ……」


 ウムルは歯噛みする。

 今回の一撃は、これまでの遊びジャブとは違い、

 本当に殺そうと思っていたのだが、


「……普通にミスった……クソがっ……センエースエンジンは、本当に、制御するのが難しい……あまりにもピーキーすぎる……なぜ、こうも、安定性をドブ捨てられるのか、意味がわからん……」

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