第1636話 強引なパッケージ。


「龍試委員のメンバーとして、しばらく、学園に貢献してくれたら、その時は、あなたたちの合格を正式に認めるわ」




「……わかりました。その任務、謹んでお受けいたします」




「ありがとう。話がはやくて助かるわ」


 と、簡素な言葉を投げかけることで、

 『全宮ルル』と『アモン&IR3』の話し合いは終わった。


 となれば、当然、次は、

 ゲンたちの番。


 ルルと『アモン&IR3』の話に区切りがついた直後、

 かみつくような勢いで、


「さっきも言った通り、俺はまだ負けていません。切り札があるというのは、ハッタリではなく事実です。あの女の切り札がどんなもんか知りませんが、俺の方が上だと断言できます。ぶっちゃけた話、その気になりさえすれば、あの二人程度を殺すことは容易でした」


 などと言い切っているものの、

 本音を言えば、


(切り札を切ったとしても、負けていただろうなぁ。セイバーが使えれば、そりゃ、楽勝だけど、絶対に使えないしなぁ)


 と思っているのだが、

 この場で、弱腰発言を口にしても、

 自分が不利になるだけなので、

 あえて、『極端なほどの強気発言』で押し通すゲン。


「よって、退学というのは納得が出来ません」


 ゲンがそう言ったのを受けて、

 ルルは、感情のない表情で、


「あなたが納得しようがしまいが、そんなこと、どうでもいいわ。さっきも言ったけれど、この学園では私がルール。私が黒と言えば、白でも黒になる。それが、この全宮学園という特殊空間。私の、私による、私のための楽園。この学園において、私が、あなたを納得させなければいけない理由なんて、これっぽっちもない」


「……メチャクチャだ」


 ルルの暴君ぶりに、

 ゲンがドン引きしていると、

 そこで、ロコが、

 ルルの目をジっと見つめて、


「ルル叔母様。くだらないおしゃべりはその辺にして、さっさと、『退学を取り消すための条件』を仰ってください」


「さすが、物分かりがいいわね、ロコ。そういうところ、好きよ」


「あたしは、叔母様の、そういうところが嫌いです」


 と、ちょっとした皮肉をジャブってから、


「……叔母様の性格は、それなりに理解しているつもりです。あなたは、あたしと同じ。頑固で偏屈。けれど……」


「けれど、なに?」


「――ただのクズじゃない。あなたの『迂遠なところ』は嫌いですが、あなたの『理知的なところ』は好ましく思っております」


 ロコの発言を受けて、

 ルルは、ほくそ笑み、


「いろいろとツッコミどころのある発言ね」


 そう言ってから、

 三秒ほどの間をとって、




「あなたを退学させないことで、この学園にどんなメリットがあるの? いったい、あなたは、この学園に、どんな貢献ができるの?」




 と、試すように、

 そんな言葉を投げかけた。


 ロコは一秒たりとも迷わなかった。

 前提を全て飲み込んで、



「龍試委員会に所属させてください。そうすれば、学園に貢献することが出来ると思います」


「あらあら、ロコったら、そんなに、学園のために働きたいの? しょうがないわねぇ。わかったわ。あなたの心意気に免じて、退学は取り消しましょう」



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