第1634話 どちらにつくか。


(もし、件(くだん)の組織が、ゼノリカのように『異世界侵略の経験者』だとしたら、『本物の戦争経験』に乏しい『この世界』は、間違いなく悲惨な目にあう。……もし、世界侵略の初手に『エリアBの掌握』が選ばれてしまえば、どうにか凌げたとしても、壊滅寸前まで追い込まれることは間違いない)


 この世界を支配している統治者の一角――

 『全宮家』を飲み込んでしまいかねないほどの脅威。

 それほどの巨大組織である可能性。


 ――そんなことを想像するルル。


(……もし、この推論をテラやアギトに話したら、『飛躍のしすぎ』と、笑うでしょうね……あの二人の目は節穴だから)


 などと、軽く家族をディスりつつ、


(ロコなら……わざわざ教えてあげなくとも、いずれ、私と同じ結論にたどりつく。あの子は、バカな男たちと違って、賢いから)


 アモンと戦っているロコをチラ見しつつ、

 心の中で、


(ロコの場合……積極的に、その組織とつながりを持とうとするでしょうね……『あの二人(アモンとIR3)』の裏にある組織が、どのような思想を抱いている集団であれ、あの子の資質を考えれば、よっぽどの節穴じゃない限り、ほぼ確実に、迎え入れるはず)


 たぐいまれな洞察力で、

 『アモンとIR3』の『裏』に潜む、

 『ゼノリカ』の存在を感じ取ったルル。


 けれど、そこまでが限界。

 情報不足の現状では、

 『正確に推察できる範囲』にも上限がある。


(……『あの二人(アモンとIR3)』の実力からして、間違いなく『組織』の幹部。中枢に近い場所に座する重役のはず。『ゼノリカ』でいうところの『五聖』の中の二人といったところ。少なくとも、『九華ぐらいの地位』にはついているはず)


 彼女は知らない。

 アモンやIR3ですら、

 ゼノリカの視点で言えば末端でしかないことを。


(……『エリアAと同等に近い戦力』を持っているかも……という推測は、さすがに、相手を高く見積もりすぎでしょうけど……しかし、『楽観視したものの、現実は想像を超えていた』……というマヌケな事態に陥るよりは、過大評価の方がマシ)


 可能な限り高く見積もったつもりのルル。

 けれど、現実は、彼女の推測を大きく超えている。


 しかし、それも、仕方のない話。

 アモンとIR3は、強すぎる。

 存在値の数値だけで言えば、

 ザコーやゴミス級でしかないが、

 戦闘力を加味すれば、十分に五大家クラスの実力を持つ。


 そんな超人に対して、『末端の一人でしかない』という判断は下せない。



(……もし、あの二人の裏にある組織が、本当に、エリアAの軍事力に匹敵する力を持っているとすれば……近い将来、確実に戦争が起こる……仮に、相手が和平を望んだとしても、エリアAは共存なんて認めないから)



 エリアAは、絶対の王者であることを望む。

 ゆえに、同等の戦力なんてものが現れたら、

 確実に、徹底して、つぶしにかかるだろう。



(ゆえに、大事なことは、『どちらにつくか』を、可能な限り早期に見極めること。その判断が遅れれば遅れるほど不利益を被る)

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