第1632話 おそらく。
(ギリギリで勝ちましょう。ほぼ引き分けに見えるくらい、ギリギリの接戦に見せて勝つ。それがベストだと私は考える)
(……だね)
お互いが『納得できる結論』に達したところで、
アモンとIR3は、ギアを入れ替えた。
相手よりも、ほんのわずかに上回る程度に、
自分を丁寧に抑え込みながら、
ロコとゲンを追い込んでいく。
『全力でないこと』を決して悟らせない、
絶妙な力加減で、接戦を演じる。
その様子を見ていた『全宮ルル』は、
(……今のロコとゲンだと、あの『二人(アモンとIR3)』の『底』を引き出すのは無理のようね……)
ロコとゲンの目はごまかせても、
ルルの目はごまかせない。
(けれど『その事実』からだけでも、十分に推測できる。とんでもない実力者。あのロコとゲンを子供あつかい出来るだなんて……まあ、あの二人は、間違いなく子供なのだけれど)
ロコとゲンは、見た目こそ子供だが、
しかし、実力はハンパではない。
現状、この世界に、ロコとゲンを子供あつかいできるのは、
『五大家の成人(戦闘職)』と『クリムゾンスターズの上位』ぐらい。
(……『この二人(アモンとIR3)』の何より恐ろしい点は、どちらも、明確な『スペシャリスト』であるということ。……間違いなく、あの二人は、『組織』の歯車)
『個』ではなく『全体』を動かすことを前提としたスペック。
オーガナイゼーションという概念が前提のスペシャリスト。
――『ルルの気づき』は、簡単に言えば、
所作や言動から、
『自営業ではなくサラリーマンである』、
――と雰囲気だけで理解した感じ。
それも、窓際族なんかではなく、
超大企業のスーパーエリートサラリーマン。
ルルは頭を回転させる。
経験ではなく、知識と想像力で、
現状に対する打開を試みる。
(最初から思っていたけれど、この二人の戦闘スタイルには共通のクセが見られる。この独特のパターンと特質は、資質や才能の違いではない。あえていうなら、文化の違い。……同じ歴史を歩んできたとは思えない『骨格の違い』ともいうべき根本のズレ)
ルルは、戦闘技能の方は、さほど優れていないが、
戦闘考察力に関してはズバ抜けている。
純粋な殴り合いは不得手だが、
巧みな戦術を必要とする戦場においては、
無類の強さを発揮するタイプ。
その無類の洞察力が気づかせる。
――『この二人』と『自分』は、
歩んできた歴史が違う。
(……考え方が違う。思想が違う。イデオロギーの相違。哲学の差異……)
『戦闘思考力の高さ』は、
周辺視野の広さと直結している。
全体を見通す目。
マクロの視点で物事を考えられる頭脳。
――ゆえに、届く。
彼女のイマジネーションは、
『答え』にたどり着く。
(……おそらく、この二人は……『違う世界』から来た……)
『現実に即しているか』は、一端置いておき、
『とりあえず』の『直感』をフル稼働させた、
『かもしれない』
を目安に、モノを考えるルル。
真・第一アルファにも、小説等のエンタメは存在する。
そして、その題材として『異世界』が用いられることも多々ある。
『ここ』とは『別の世界』を舞台にした物語。
だから、
(数日前から各地で起こっている『奇妙な出来事』の『規模』と『程度』から鑑みるに……おそらく、転移したのは、この二人だけではない。数十人……あるいは、数百人という組織単位の異世界転移が行われたとみるのが妥当)
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