第1510話 積み重ね方なら知っている。


 初日こそ、『話にならない』という評価をいただいていたゲンだが、

 三週間も経てば、

 『あいつ、もしかして天才じゃないのか?』

 という疑問を抱かせるほどの爆発的成長を見せた。


 もちろん、三週間程度の努力だと、実力的には最下位レベルのままだが、

 その『脅威の成長率』に、他の学生や教師は目をまるくした。


 狂気的な努力と集中力、

 そして、『Pタイプ数真4号』のサポートのおかげもあって、

 ゲンは凄まじい速度で開かれていった。


(……俺の興味があることに対する吸収率はヤバいな……英単語は100回復習してもウロ覚えってのが山ほどあったが、剣や魔法に関する知識は、どれだけ難易度が高くてもスルスルと頭に入ってくる……)


 理解は知識を補強して、知識は理解を補強する。

 脳の中で、互いに補完し合って、

 いつしか、強固なニューロンネットワークが構築される。


 好きこそものの上手なれ。

 才能がなくとも、興味が強ければ、驚くべき速度で磨かれていく。



「――今日はここまでにしようか。では、事前に告知した通り、来週は実技の第一次中間テストを行う予定だから、練習をかかさないように」



 錬金の講義では、毎週おこなわれる小テストの結果で評価が加算されていき、

 最終的な試験プラス小テスト評価が八割を超えていないと単位がもらえない。



「……よう、ゲン。来週の中間、いけそうか?」



 『ボーレ』から、そう声をかけられたゲンは、

 教科書をカバンに詰め込みながら、


「粗悪素材で高クオリティのポーションを錬金する練習なら、今日までに、1000回以上やってきたから、問題なく基準点は超えられるはずだ」


「……1000回って……お前、どんだけ、この講義にかけてんだ……ほかの講義、落とすんじゃねぇか?」


「ほかの講義の課題でも、同じくらいは積んでいるから問題ない」


「……お前、いつ寝てんだよ」


「俺は生まれつきショートスリーパーだから、睡眠時間はほとんど必要ない」


 それは嘘であり、

 実のところは、『数真』で『ショートスリーパー』のスペシャルを会得した。

 結果、ゲンは、一日26分の集中睡眠で、常人の7時間分の休息を得ることができるようになった。


 そのため、ゲンは、朝から晩まで、

 勉強・練習・勉強・練習と、

 いっさい遊ぶことなく、

 単位を取るための勉強だけを続けてきた。


 その結果、


(……なんとか、テストを乗り越えられる程度の下地はついた)


 もちろん、これからも練習と勉強は必要だが、

 徹底して詰め込んだ結果、

 どうにか、基準点の突破は見えてきた。


(これで、ようやく、『次の段階』に進める)


 ニィと微笑むゲン。


 入学試験から今日まで、怒涛の勉強ラッシュで、

 他の事をしている余裕がいっさいなかったが、

 ある程度、先が見えてきたことで、

 ゲンは、次の段階に進むことを決意する。


(ずっと考えてきた……『450億』のつかいみち……)


 アギトがロコに支払った900億の半分。

 450億円を入手したゲンは、

 当然、その使い道に悩んだ。

 悩んで悩んで悩みぬいた結果……

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