第1450話 20倍? 足りんな。倍プッシュだ。
「俺より20倍ほど数値が高い……その程度のザコが、俺に勝てると思うなよ」
宣言しつつ、心の中で、
(言っておくが、当時の俺と、愚神の差は、こんなものじゃなかったぜ)
ボソっとそうつぶやくカドヒト。
――神種が開く前に対峙した際の『バーチャの圧力』を、
『彼』は、今でもハッキリと覚えている。
『神』と『神以外』の差。
それは、実際のところ、
アリと恐竜どころの騒ぎではないのだ。
バーチャは、愚かな神だったが、
決して弱い神ではなかった。
表層の神でありながら、
ありえないほどの努力を積んだことにより、
神を超えた神――『超神』にまで届いた本物の超越者。
そんな超越者に、人間の身で相対し、
最後の最後には乗り越えてしまった命の王。
その狂気は伊達じゃない。
(だから、3000じゃ足りねぇ。もっとこい。足踏みは不要。乗り越えていけ。くだらない常識をぶっちぎれ。小学生の冗談みたいな『頭の悪い非常識』を暴走させろ)
――もっと言えば、
『神界の深層』でもがいていた時の『周囲との差』は、
数十倍とか、数百倍とか、
『そんな安い数字』じゃなかった。
『当時の最強神』との間にあったのは、
『絶対に届くわけがない』と絶望せざるをえない絶対的な格差だった。
だが、『彼』は、全ての絶望を乗り越えた。
そして、ついには、
そんな当時の最強神でさえサジを投げた邪神を、
狂気の努力だけで乗り越えてしまった。
伊達や酔狂ではないのだ、
彼が背負っている看板は。
まごうことなき本物の光。
この上なく尊き神の王。
いと美しく、舞い散る閃光。
――その圧力を、モロに受けて、
バンプティは冷や汗に包まれる。
気づけばプルプルと震えていた。
たった数分、武を合わせただけなのに、
すでに、バンプティの心は恐怖に押しつぶされそうになっていた。
(たかが存在値170のアリに……なぜ、存在値3000の私が震えている……おかしいだろ……間違っているだろ……こんなの……っ)
そんなバンプティに、カドヒトは言う。
「俺を倒したかったら、最低でも『俺の全力の100倍』はつよくなってみせろ。そうすれば、さすがの俺も『あ、ちょっとヤバいかも』ぐらいは思うだろうぜ。ま、そこまでいっても、俺は、どうせ超えてしまうだろうがな。なんせ、俺は……俺より強い程度の雑魚には負けないから」
「ふ、ふざけたことばかり……ほざきおって……センエースの猿真似野郎が……センエースが嫌いなら、モノマネなどするなぁああああああああっっ!」
震えながら、
しかし、バンプティは、
「ナメるなよ、くそがきがぁああああああああああ!」
叫んでから、
「まわれぇえええ! カオスバンプティルーレットッッッ!!」
五分の経過で、また、カオスバンプティルーレットがつかえるようになった。
存在値2000以上の差がある格下に、追加でカオスバンプティルーレットを回すというのは『ド直球の恥』にあたると理解しているのだが、しかし、現状、そんな余裕はこけなかった。
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