第1448話 閃拳という概念。
「そんだけの大口をたたいたんだ。ちゃんと、俺を置き去りにしてくれよ。期待しているぜ」
そう言うと、
カドヒトは、空間を駆け抜けた。
――結果、バンプティの武は、すべて空となった。
(な、なんじゃ、この圧力は……)
バンプティが積んできた努力は本物。
そして、現状、その努力は、仮バグとの融合で開花している。
美しい武の化身となったバンプティ。
しかし、その美しさも、
カドヒトの前では、
実際のところ『空蝉』とかわらない。
存在値に差があるので、
カドヒトがいくら攻撃をあてても、大したダメージは通らない。
だが0ダメージではない。
0ダメージではないどころか、
「――神速閃拳――」
「がががががががっ!!」
凶悪なグリムアーツの連打は、
しっかりと通っている。
存在値的には『2830』差でバンプティに軍配が上がるが、
『下地の差』はそんなものではなく、
圧倒的かつ徹底的かつ決定的に、カドヒトの方に軍配が上がる。
「存在値に差があろうが、ちゃんと気合を入れて殴りつければ、最低限は削ることができる。最低限が通るなら、あとは『お前の攻撃を避けて殴って』を繰り返すだけでいい。それで俺の勝ちだ。単純な話さ」
「なんだ、貴様の拳は! どういう手品だ!」
バンプティごときでは理解できない武。
バンプティだって『高みに至った達人』だが、
『高みに至った達人』程度が、
――『神の王』を理解できるはずもなし。
「ただの正拳突きが、こんなに痛いわけないだろぉおお! ふざけるなぁああああ!」
「聖典読んでいるんだろ? なら、閃拳ぐらい知っているだろ? 閃拳はただの正拳突きじゃない」
「微量のアリア・ギアスが込められているだけの猿真似が! こんなに痛いわけがないと言っているんだ!! 私だって、閃拳ぐらい使える! 名前を叫んで殴るだけだからなぁああ! 閃拳程度のちょっとしたジャブで、これほどの痛みを与えられるワケがない! なんでだ! どうして!」
ド〇ゴンボールを読んだ事があるものならば、
だれしも一度は『か〇はめ波』をまねるように、
聖典を読んだことがある者であれば、
誰でも一度は、閃拳をまねてみる。
なんせ、『閃拳』と口にして正拳突きをするだけなので、
難しい要素は一ミリもない。
聖典教の宗派の中には、『祈り』の一環として、
毎朝『閃拳100回』を行うというのもあるほど。
「ちょっとしたジャブ……微量のアリア・ギアス、か……はは」
つぶやきながら苦笑いをするカドヒト。
一般人の視点で言えば、閃拳は、
『名前を叫ばなければならない』という以外にデメリットがほぼない。
その名前だって、別段『長くて言いづらい』というわけではないので、噛むこともなければ、大きなタイムラグが生じるわけでもない。
もちろん、自分が何をしようとしているか『相手に丸わかりになる』というのがデメリットだが、『それがどうしてもイヤなタイミングでは他の技を使えばいい』だけなので、大きな重荷というわけでもない。
閃拳は『センエースが使っていた』という点以外には際立った特徴がない、
いわゆる『象徴的な技』でしかない。
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