第1446話 とまるんじゃねぇぞ……
(……止まるなよ、バンプティ……そのまま、神種を芽吹かせろ。なんなら、今の俺をぶっちぎれ。……そうすれば……もしかしたら……届くかもしれない……最果ての向こう側……『究極超神化7』に……)
心の中で、
バンプティの『さらなる飛翔』を夢見ながら、
カドヒトは、
「ずいぶんと強くなったな、バンプティ。魂魄の壁をいくつも超えた姿……感嘆するぜ、その異常っぷり」
カドヒトの言葉を受けて、
バンプティは、
暴走する興奮を、
理性でどうにか抑え込みつつ、
「ふふ……そうだろう、そうだろうとも。私は今、遥かなる高みにある。自分でも信じられん。まさか、無能の私が、ここまでの領域にたどり着けるとは……」
バンプティは、歓喜をかみしめる。
努力家のそしりを受けるたびに、
『私には【成長早い】のスペシャルがある』
と自分を慰めてきたが、
――本当は知っていた。
自分がどうしようもない無能だってこと。
「……すべての運命に感謝する。私ほど幸運な者はいないだろう。まさか、センエース以上の高みを見ることができるとは……正直、夢にも思っていなかった」
その発言を受けて、
カドヒトは、小指で耳をほじりながら、
「センエースの高みは、そんなもんじゃねぇよ」
「……ん? なんだ、貴様。これまで散々、センエースを否定してきたくせに、今度は一転して、センエースを擁護する側にまわるのか? 相変わらずの情緒不安定ぶりだな」
「先の発言も、また、『バンプティに下した評価』と同じで『支離滅裂を暴走させている』ってわけじゃねぇよ。『センエースの高みはもっと上である』というコトを知っているだけだ。『センエースの強さを知っているコト』と『センエースが過剰評価されているコトを忌避する感情』……この二つには、どこにも矛盾する箇所はない。あいつは変態だが、強いんだ……今の貴様なんかよりも、はるかにな」
「くくく、はははははは! なんじゃ、なんじゃ! これ以上ない笑い話じゃな! 反聖典のリーダーが、実は、誰よりも熱心な聖典教信者だったとは! 傑作じゃ!」
「……ほんと、お前は人の話を聞かんやっちゃなぁ」
呆れ交じりのため息をついてから、
「まあいいや。とりあえず、今の俺にとって大事なことは『お前の俺に対する評価』なんかじゃねぇ……お前がどこまで駆け上がるのか……そこだけだ」
そう言ってから、
カドヒトは、スゥゥゥーっと、両手で静かに、ゆっくりと弧をえがく。
驚くほどの柔らかな武を構えて、
「さあ、はじめようぜ。お前も試したいだろ? 存在値3000のステージ。存分に楽しめ……そして、絶望しろ。カンストの空虚さを教えてやる」
そう言うと、
カドヒトは、
――ダンッと地面を蹴った。
「ふん、バカが。存在在170程度の雑魚が、存在値3000の私に敵うとでも? 愚かにもほどがある!」
言いながら、
バンプティは、ナメたムーブで、
カドヒトの攻撃を払おうとした。
蚊を相手にしている子供のような雑な動き。
普通なら、それでも十分だった。
それだけの数値的な差が両者の間にはあった。
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