第1420話 センエースなんて、ジャミの劣化版。
「お前の行動は非常に正しいと言える。お前みたいなやつがどんどん増えていくべきだ。聖典なんてなくていい。いや、あってもいいが、センエースがどうこうって部分は全削除していくべきだ」
カドヒトは、熱のこもった言葉で、
「センエースなんて、もはや何もやってないんだから、持ち上げる必要なんてない。今の世の中が安定しているのは、センエースのおかげではなく、ゼノリカのおかげ。ゼノリカが必死になって毎日を積み重ねてきたから、輝くような今日がある。それが認識できているのなら、それでいい」
「……前から聞きたかったのですが……」
「なんだ? 好きに聞けよ。今の俺の仕事は、お前らと対話することだ」
「口ぶりや思想から、リーダーは『センエースが実在する』と思っているようですが……」
これまでは確認してこなかった。
する必要がないと思っていた。
あくまでも『思想の違い』として処理していた。
しかし、パメラノとの対話で心に熱がともったようで、
何もかもに対してハンパではいられなくなった熱き若者スールは、
カドヒトの目をジっとみつめて、
「リーダーは……なぜ、センエースの『実在』を信じられるのですか?」
「センエースって名前のバカは実在するぞ。別にたいしたやつじゃないが」
「……そうなのですか?」
『センエースは実在した』という『妄言』を吐く者はたまにいる。
超上位者以外で『不死のスペシャル』を持つ者は、かなり希少だがゼロじゃない。
スールは、今日までの人生の中で、五人ほど、『センエースを見たことがある』という人間と話したことがある。
その全員が『パレードで見たことがある』とか『戦争中に一度だけ声をかけてもらった』とか、そういうレベルでしかなかったため、当然、信じるにはいたらなかった。
基本的に、スールは『センエースは存在した』という発言に対して、
『嘘つけ』としか思わない。
が、しかし、ほかならぬカドヒトの言葉となれば、
『ただの嘘』として処理することはできない。
スールは、注意深く、カドヒトの言葉に耳をかたむける。
「戦争で暴れたのも、でかい虫をたくさん殺したのも、イカれた神の処理をしたのも事実だ。しかし、あいつが一人で全部をやったってのは完璧に間違いだ。強い力を持っていたのは事実だが、それだけ。先天的にチートスキルを持っていたから、当然のように強かったってだけ。……お前にもわかるように例えると、センエースは、ジャミの劣化版だな」
九華十傑の第一席ジャミ・ラストローズ・B・アトラー。
類稀(たぐいまれ)な資質と、先天的な凶悪チートスキルをあわせ持つ稀代の超天才。
「ジャミを全力で不細工にして、天才性を排除して、性格を悪くすればセンエースが出来上がる。どうだ、イメージできたか?」
「……そうなると、なにも残らないような……」
イケメンで、天才で、人格者。
それがジャミ・ラストローズ・B・アトラー。
「そう。何もない。先天的なチートスキルがエグかっただけのキ〇ガイ。それがセンエースの実態だ。もちろん、戦わせれば、それなりに強いが、結局のところは、それだけの暴力装置。敵を殺すことは出来ても、人を豊かにすることはできない」
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